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その時、歴史は動かなかった!? (PHP新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: PHP研究所
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読みやすくて一般向けです ★★☆☆☆
NHKの「その時歴史は動いた」に突っ込みを入れる本である。
が、だからといって、この本の情報の精度が高いわけでもない。
司馬遼太郎や半藤一利を高く評価するレベルの、飽くまで一般レベルの知識である。
ただ、NHKのレベルがあまりに低いので、それでもじゅうぶん突っ込みは可能である。
(民放の歴史番組はもっと低いが)

ひとつだけ納得できなかったのは、小牧長久手の戦いに対する著者の低評価である。
著者は「戦闘と戦争は違う、だから長久手の勝利は意味がない」と言いたい様だが、
正反対だと思う。戦争は戦闘で成り立っており、戦闘の勝利が歴史を動かした例は多い。

長久手の勝利がなかったら、というより別働隊の活動が成功していたら、
家康は、潰されていたか、相当不利な条件で降伏したはずである。
長久手の勝利があったからこそ、降伏した後も高い地位を保つことが
できたのであり、そう考える歴史家達が間違っているとは思えない。

乃木希典を愚将とはしなかった点は評価できるが、旅順を陥落させた名将としなかった点では、
いまいち評価が弱気。また旅順戦から日本軍が白兵主義に陥ったと書いてあるが言いすぎである。
日本軍は太平洋戦争の時でも白兵主義ではない。武器弾薬が続く限りはまともに戦おうとした。
本当の歴史は誰も知らない ★★★☆☆
本書がNHKの歴史教養番組「その時歴史がうごいた」の内容に対して一石を投じる構成であることは分かっていましたが、その多くがNHKの番組批判に割かれていることにがっかりしました。もう少しNHKの番組を尊重しつつ自分の意見を述べるという構成であれば共感を得ることができるのですが、あまりにも番組批判が目立つため、せっかくの自論や研究成果よりもクレームの方が目立つ本になっているのが残念です。それでも明治維新以降の構成については、時代的にも歴史的研究材料が豊富なことも手伝って、NHK批判よりも同番組を認めつつ自分の意見を補足する構成になっており読み応えがありました。そもそも歴史を述べることは非常に難しいもので、誰もが正確に歴史を証明することはできません。現存する歴史書も勝者が自分の都合のよいように書き直したものであることは疑う余地はなく、そのほかの参考文献も歴史的事件から数十年経過後に書き記されたものが多いため、本当の事実関係は誰も言い当てることができないという大前提があります。そのためNHKの番組も正しいとは言い切れませんし、本書の主張も正しいとは言えません。そういった前提で鈴木氏の意見が正しいと感じている読者にはそれなりに面白い本なのかもしれません。
やたら、めったら痛快だけど、いまのNHKに求めても無駄なような気がする ★★★☆☆
NHK番組『その時、歴史は動いた』の編集姿勢に対する批判の書というのが本書の位置づけ。
多くは、著者「鈴木眞哉」氏らしく実証主義的観点からの批判であり、この番組が採りあげた従来からの「通説」、「定説」にある問題点を具体的に指摘するいっぽう、一部の創作家などが持ち出す「奇説」、「珍説」が、本質的に場当たり的な思いつきによる「奇説」、「珍説」にすぎないことへの批判まで、八方撫で斬りの観がある。
「物理や化学の世界と違って、歴史というものは、選択肢がいろいろある場合、それぞれ実験して確かめることはできない」、「”本人に聞いてください”としかいえないようなことに解答を与えるのは、歴史小説の世界であるが、そういうものを歴史と思ってはいけない」のは当然だとしても、しかし、学問的に実証された事実ばかりに歴史記述を限定するなら、ただ単に歴史年表や人名辞典になってしまうわけで、やはり、人間のドラマツルギーも歴史記述のなかに取込んでくれないと、歴史に興味が持てなくなる。
ただし、注目を集めるために奇説を開陳に及ぶ、あるいは売らんかなのため珍説に奔る、批判すると世間から袋叩きに会いそうな通説には阿るなど、このNHK番組がエンターティメントと歴史学をごちゃ混ぜにして中途半端な対応を取っていることへの警告としては、大いに賛意を催したい。
だいたい歴史家さんたちには、かならず原因があって結果があるというかたちに持って行かないと学問ではないと思込むくせがあるが、世の中にはフロックというのも沢山あって、まったくの「瓢箪から駒」や、また、当の当人すら理由が分らないまま歴史上の事実になってしまうことも、ちょくちょくあるのが現実。
そこまで幅広く押さえた歴史観を「TV歴史番組」に期待したいところだが、そんなのは、いまの国営放送NHKに要求しても、まず相手にされないだろうと思うばかり。
そのへん、ちょっと無い物ねだりではないか。でも、誰かが声をあげないとね。
NHKが放送した「後ろ向きの予言」やトンデモ論、間違った深読みを戒める。 ★★★★☆
著者はこれまで、影響力のあるNHKの歴史番組が日本史の実像をいかにゆがめてきたかを度々指摘してきたが、本書は代表的長寿歴史番組「その時歴史が動いた」で放送された歴史解釈の怪しい点を要領よくまとめた面白い作品。

特徴は3つ。まず、著者は「あら探しや揚げ足取りをする意図」はない、と「はじめに」で述べているが、結局は安易な番組制作を戒めている。次に、大半は放送内容への物言いだが、ほめる所はほめており、「その時歴史が動いた」こともあったのである(解釈や再現映像がおかしい場合はあるが)。従って本書のタイトルから上記番組完全否定の書と誤解しないでほしい。最後に、著者の専門分野と上記番組で取り上げた時代の偏りから、やはり戦国時代〜豊臣氏の滅亡に多くの頁が割かれている。それでも、源平の抗争や元寇、幕末〜日露戦争等に関する著者の歴史解釈に触れることができるのは楽しい。旅順攻撃のその後の日本軍への影響の指摘は刮目に値する。

NHKはその影響力を自覚して新規なトンデモ論に飛びつくのは避けてほしい、という点で著者と私は同意見である。
某有名番組に「食い足りない」方向けの本 ★★★★★
署名から露骨に分かるように、本書はNHKの某有名番組に取り上げられた歴史的事件を対象に議論するものである。

某番組は良心的に制作されていると思うが、基本はエンターテインメントであり、限られた時間の中で「結論」を視聴者に提示しないといけないという限界がある。
評者も歴史好きの1人であるが、番組を見終わったあと「あれっ?」と感じたことが確かにある。

本書は、そういう「歴史好き」の欲求不満に答える本である。
番組で十分検討できなかったこと、見落とされていたことなどについて情報を提供してくれる。

ただし、本書は至って「学問的」な立場で書かれているのでご注意されたい。

ここで言う「学問的」とは、「分からないことは分からないとハッキリ言う」というスタンスである。
従って本書では歴史研究において結論の出ていないことについては「分からない」と書いてあるので、「結論」を求めている向きには逆に欲求不満が募るかもしれないので注意されたい。この「使用上の注意」さえ守ってお読みいただければ、「歴史好き」にとって大変楽しい本であろうと思う。