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白いおうむの森―童話集 (偕成社文庫)

価格: ¥735
カテゴリ: 単行本
ブランド: 偕成社
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胸の中がほうっとあたたかくなるファンタジー ★★★★☆
 いちめんの雪景色、いちめんの菜の花ばたけ、露草(つゆくさ)の青い花の群れなど、水彩画の絵を思わせる話の中の風景。目にしみるやわらかな色合いが素敵ですねぇ。
 本書は、1973年(昭和48年)に筑摩書房から刊行された『童話集 白いおうむの森』を文庫化したもの。「雪窓」「白いおうむの森」「鶴の家」「野ばらの帽子」「てまり」「ながい灰色のスカート」「野の音」の七つの短篇が収められています。
 きれいな青いお皿の絵がだんだんに変わっていく、哀しくて美しい綺譚「鶴の家」。さびしがりやのお姫さまと、おせんという名の少女の心のふれあいを描いた「てまり」。このふたつの話が、格別、気に入りました。
 できれば、同じ偕成社文庫の安房直子の童話集『風と木の歌』と併せてどうぞ。『風と木の歌』のほうには、「きつねの窓」「さんしょっ子」「空色のゆりいす」「もぐらのほったふかい井戸」「鳥」「あまつぶさんとやさしい女の子」「夕日の国」「だれも知らない時間」の八つの短篇が収録されています。
 そして、この作家の作品をもっと読みたくなったら、全部で7巻ある【安房直子コレクション】(偕成社)の扉を開いて、本の中に飛び込んでみてください。きっと、素敵なファンタジーのお花畑に遊ぶことができますよ。
子供だけではもったいない ★★★★★
この物語の集まりは、まるで突然見つけた小さな野の花の原っぱのようです。こんなに大切で愛おしい本は、なかなか出てきません。簡略化された優しい語り口。しかし甘えのない時には厳しいお話の最後もあるのです。

子供達には、小さな頃にはお話の含む全てが分からないかも知れません。それでも、この本は心に刻まれるのではないでしょうか。読んであげている大人も、その暖かで切ない世界に惹かれるに違いありません。これは誰の心の中にでもある、ほんのちょっとの欠片を映し出した大切な本です。

安房直子さんという作者は、もう亡くなっていますので、これ以上新しいお話が読めないのが残念です。