とある田舎町の駅前からブルン、ブルルンと発車して、山の終着駅に着くまでのバスの旅を描いた絵本。ピンポンとなるたびにバスは停まり、いろんな人がのって、いろんな人が降りていく。しかし、誰より魅力的なのは、バスの運転手だ。病院の前のバス停では、「みんな早く元気になるといいな」と思い、いつもバスに手をふる子どものいる家の前を通る時は、すこしスピードを落とす。いつの時代も、子どもたちにとってバスの運転手はヒーローなのだ。
さらに、この絵本を魅力的にしているのは、その絵である。あたたかな線と色で描かれる絵には、言葉にはなっていない小さなストーリーがたくさんつまっている。風邪をひいたおじいさんに席をゆずる人や、カーブでばらまかれてしまった荷物を皆が拾ってあげたりしている光景などがそこには描かれている。さらに最後のページは運転席の図解になっているなど、暖かな演出が施された1冊。(小山由絵)