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反復 (岩波文庫)

価格: ¥865
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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赦罪をめぐる問題 ★★★★★
カミュの何の作品だったか、「どんな人間でも、今生きている親友が死にその葬儀に参列する自分の姿を想像したことがあるだろう」という内容の一文を読んで、はっとした記憶があります。想像の中で親友を殺して過去のものとしてしまう、それは憂愁を帯びた甘い自己耽美なのか、それとも関係が継続することへの恐怖の裏返しなのか。いずれにしても、そこで友情は追憶されるものとなり、実在の親友は私の世界から退き、そして残された私は詩人になる。
本作品の架空著者コンスタンティウスが観察し続ける青年も、恋の歓喜と不安の中で最初の日から恋愛を追憶するのです。「彼は恋愛関係をすでにすっかり完了しているのである。(…)その娘が明日死んだとしても、それは彼にとって何ら本質的な変化を引き起こしはしないだろう」(p. 18)。彼は、詩的創作力に目覚めると同時に、恋い慕う娘が愛の対象でないことに気付き懊悩する。そして、遂にこの恋は青年の失踪という形で破局を迎えるのです。
失踪した青年はコンスタンティウスへ手紙を書き続ける。旧約のヨブ記を引きながら、「反復」をめぐってもがき苦しむ。「ギリシア人は、あらゆる認識は追憶である、と教えたが、新しい哲学は、全人生は反復である、と教えるだろう」(p. 8)。「反復」とは「現にあったことがある」もの、つまり可能態としての現存在が、現実のものとして「移行」すること。失われたキリストは、信じることによって現に在るものとなりうる。この問題は、こうした宗教の問題をめぐって、実際に犯した罪が赦罪によって現実的な原初の状態へ「回復」することへ収斂していくようです。
手紙の最後で自己を回復したと主張する青年。しかし、彼の謳う「回復」は真実の「反復」なのでしょうか。この問題の持つ本質的な複雑さは、安易な判断を許さないように思います。
後の実存文学への先駆けとなった名著。詳細な訳註、解説も大変親切です。