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誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: NTT出版
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人間の遺伝子に書き込まれた双曲割引を手なずけるために、意志や習慣という概念が生まれた。 ★★★☆☆
「それぞれの時点で、大きな長期的選択を選ぶのが(中略)、突発的な裏切りよりもよい選択に見えるのは、自分が将来も協力し続けるという期待を維持するのにそれが必要十分な場合だけだ。この異時点間の交渉状況こそが人の意志と呼ばれるものだ」

同じ大きさのものでも、近くにあれば大きく見え、遠くにあれば小さく見える。人間は何かについて判断するときも、目の前の利益は大きく見え、遠い未来の利益は小さく見える。時間とともに利益が小さく見えることを「割引」と言い、経済学の分野では一般的に指数関数的に割り引かれる指数割引を前提として理論が構築されてきた。

これに対して、双曲関数的な割引率を仮定することで、人間の不合理な選択(行動)が説明できるというのが著者の主張である。冒頭の言葉は、神経生理学的に決まっている、したがって遺伝子に書き込まれた双曲割引を手なずけるために、意志や習慣という概念が生まれたことを主張している。反復型囚人のジレンマの最適解が双曲割引を克服する手段と一致するとのアイディアは、大変興味深い。

経済学的な議論は専門外なので深入りはできないが、神経生理学的に双曲割引が検証されている研究には興味を覚えるので、文献を少し調べてみようと思う。本書で「双曲割引」という言葉を初めて知った。一読の価値ありと評価する。
誘惑されることを選択すること ★★★☆☆
この本に期待することは「どうやって意志を貫けるようになるのか」だと思う。だが読み進むに従って、この目的が忘れられて現在の立ち位置が分からなくなっていく……理解しにくい難しい表現だから……。この本の主題は「双曲割引曲線」であり、これが理解出来れば充分だと思う。訳者のあとがきにも書かれているが、意志が勝ち続ける人生は無為なものになる可能性があり、逆に誘惑に負け続ける人生は、人として生き続けることが困難になる。ほどほどが一番となるが、これを思考で紡ぎ出すことも難しい。結論は混沌である。誘惑に勝とうと思われている方には、すぐに解決に結びつかないよ、とだけ言っておきたい。
著者の言うとおりならば、俺は「正常な人間」じゃなく「『超』正常」なのかもしれない。 ★★★★☆
宮本武蔵を気取る訳では無いが、私は此処10年以上に
亘って「後悔」をした事が無い。「燃え尽き」以前の30代半ばより
若かった頃は、後悔した事もあった様な気もするが、もう良く覚えていない。
他人はどうかは知らないが、少なくとも現時点までの私にとって
「後悔」と言うのは、左程重要な感情では無いらしい。
・・但し、「過去の失敗から学ぶ」為に、定期的に「フィードバック」は行う。
だが、この時「後悔」と言う感情は殆ど全くと言っていい程、発生しない。・・

双曲割引については、グラフをイメージした方が判り易いだろう。
双曲線グラフの平面座標第一象限のみを考える。
X軸は時間軸であり、Y軸が割引率である。「儲かる・得する」と言う
経済的な「利得」の考え方で言えば、自分が金貸しか不動産経営の大家と
考えれば良い。賃貸マンションの大家だと仮定して、話を続けると
今すぐ、マンションの借り手が現れた時は、高い家賃で設定して
年利回り12%以上を取りたいと思っているが、一年間に亘って
空室状態が続いた場合は、もっと家賃を安くして、年利回り9%でも
構わないか、と思ってしまうし、更に3年間に亘って空室が続いたら
余程立地その他の条件が悪いのだろうから、もっと家賃を安くして
年利回り6%でも仕様が無いか、と考えてしまう「フツーの人間」の
「気持ち」を表したものと考えて良いだろう。
勿論、この場合は「素人の感覚」であり、「不動産投資のプロ」だったら、
例え資産デフレで売るに売れない状況でも、他に「打つ手」は幾らでも
あるだろうに、と考えるだろう。実は、相場も同じである。
「金融危機」云々が言われる昨今であっても、「儲け方」自体は
それこそ、山ほど沢山あるのだ。

どうも、双曲割引理論の提示する「フツーの人間の不合理性」
と言うのは、「投資に失敗する素人」を「正常な人間」と
考えたがる節がある様だ。

・・・
此処で敢えて、極論めいた事を言わせて貰うが、
少数であれ、ダイエットや禁煙に成功した者、トレーディングや
不動産投資に成功した者、更に消費者金融のビジネスモデルとしての成功
と言った事を考えると、資本主義ゲームの勝ち組プレイヤーは「『超』正常」であり、
負け組プレイヤーは「正常な人間」となり、「異常者」=「病人」が存在しない。
精神医学的に「治療の対象」が存在しないとなると、一気に「精神科医不要論」に
まで、帰結してしまうのでは無かろうか。勿論、トンデモ理論なのは充々承知で
こんな事を言ってるのだが。

行動経済からアプローチして「格差社会」の文脈で考えると、成功者を
「『超』正常人間」として、設定せざるを得ないだろう。だって、現実に
存在するのだから。精神医学的問題を抱えた「病人」と言うのは、この考え方では
「後悔」と言う「感情的問題」に極端に悩んだ挙句、鬱病になった人間くらいしか
いないだろうし、それが唯一の「治療対象者」なのかも知れない。

「医学的問題」中心と言うより「経済的問題」中心で考えると
「医療のプロ」である精神科医自身の出番が無くなってしまい、
著者は自分で自分の「存在意義」自体を危うくしている様にも見える。
単なる「老婆心」かもしれないが。

・・・
このレヴューも「線形的モデルの限界」の文脈の
中で書いている。

続きはまた書く。
実証実験に基づいた痛快な思考実験 ★★★★☆
心理学は人間を機械とみなす傾向がある。コンピューターのアナロジーで脳や心を語るのはその典型だろう。本書で言うところの効用理論と認知理論はどちらもこの代表打者だ。しかし、人間という機械は情報処理装置を備えているだけではない。エンジンなのかモーターなのか知らないが、動力源だって備えている。一般には「欲求」や「意志」と呼ばれていながら、何故か心理学からはほとんど注意を払われてこなかったその動力源をつぶさに解き明かしている。しかし、その解き明かし方がすごい。「ある動物の行動がより低次のプロセスや心的能力で説明できる場合は、高次のプロセスや心的能力を持ち出すべきではない」というモーガンの公準を体現しているからだ。

説明に使う「低次のプロセス」は、ハトやマウスやサルの行動実験から導き出した「双曲割引関数」という原理だけ。あとは、それを補強するための枠組みとしてゲーム理論とカオス理論を少々。これだけの道具で、文学や哲学が長い年月をかけて洗い出してきた「意志」の性質と、それが個人の中で形成されていくプロセスを描き出し、「意志」にまつわる「それってあるある!」というエピソードの多くを説明してしまう。しかも精神科医らしく、フロイトの概念まで説明してみせるというおまけつきだ。そして話は、「意志」の功罪とあしらい方、「意志」と社会環境との相互作用にまで広がっていく。

もちろん、著者も指摘しているように、ここで描かれたストーリーが全て正しいと言い切れるわけではない。この本の一番の意義は、「双曲割引関数」という世間一般にとって目新しい知見を広めたことでも、結論として提示された「意志」にまつわるストーリー自体の面白さでもなく、その間をつなぐ論考そのものにあるのではないかと思う。つまり、一般的な概念や合理論的な推論だけでは演繹できないミッシング・リンクを、行動実験から実証的に得られた帰納的原理を用いることで補ってみせるという痛快さだ。

決して読みやすい本ではないが、興味深い小ネタも満載である。(個人的には、現在の自分と将来の自分との間の異時点間交渉という反復囚人ゲームが面白かった。)巻末にある長めの訳者解説がくどいくらいに親切丁寧なので、まず先にこれを読み、折に触れてそこに立ち戻りながら本文を読み進めるのがいいと思う。
双曲割引をめぐるやや雑然とした長いエッセイ ★★★☆☆
著者は、未来の報酬の心理的な割引は、
合理的な指数関数ではなく、双曲線型であるという、
ハーバードにいた心理学者ハーンスタインの
仮説を研究してきた。

この事実はいまでは実験経済学の中で広く知られていて、
最近でも阪大のCOE研究でも使われているほどである。

双曲割引では、異時点間の選好に矛盾が生じる結果、
ダイエット中なのに、つい食べてしまう、とか
禁煙したいのにできない、とかいうような人間的、
あるいは日常的な悩みを説明できるのである。

これはすでに行動経済学のすべての教科書に書いてあるので、
詳しくはそちらを読むのがいいだろう。
本書は教科書に比べて、あまりにも話題が散発的で、
あまりまとまっていないため、エッセイというべきだからである。

著者は第一人者であるため、
私は双曲割引の基礎となる神経科学的な基盤について
示唆しているのではないかと期待して読んだが、
それは全くなくて、
過去の人間の知見と双曲割引仮説がいかに整合するかに
の説明に終始しているのは残念である。