世界との関係性の中に日本を位置づけ直す好著
★★★★★
文句なく満点! 江戸時代日本の外交政策は実は「鎖国」ではなく、反キリスト教を国是とした、戦略的かつ管理されたものだったというのがタイトルの含意で、その点に関する章が中心ではあるのだが、本書の内容はそれだけに留まるものではない。徳川国家、ひいては日本が「世界」をどのように認識していたか、その中の「日本」をどのように認識していたか、さまざまな題材で多角的に迫る。異国人がどのように描かれたか(第4章)、朝鮮外交使節の行列を徳川幕府がどのように「利用」したか(第5章)、中国本土から富士山が見えるという「富士山」言説が「神国日本」のイメージ形成にどのように貢献したか(第6章)、などなど、いずれも日本を相対化し、世界との関係性の文脈に位置づける、明快で説得的な作業だ。空間的にも時代的にも、さらには扱う題材的にも、きわめて広い視野から日本を相対化しているので、狭量な国粋主義者からすれば不愉快なのかもしれないが、著者の知的水準の高さは疑う余地がない。このような試みが、他の時代の日本史にとっても必要なのだと思う。
目から鱗
★★★★★
江戸日本は鎖国だった。朱印船貿易等を通して海外に開かれた日本はやがて秀吉のキリシタン追放や徳川の「鎖国」政策によって「開かれた日本」から「閉ざされた日本」へと転換し、発展から取り残されていくことになった。長崎の出島は鎖国の唯一の例外として開かれた窓であり、基本的に幕府は「鎖国」という孤立主義的な消極的対外政策を展開した。
このような「鎖国」史観は80年代以降の研究を通じて歴史学的にはほぼ否定され、近世日本は「鎖国」ではなかったという認識が主流となっているという。本書は、朝鮮通信使研究を専門にしそのような「鎖国」史観批判の一翼を担ってきた著者による、江戸日本を世界の中で捉え直す試みである。日本は、決して閉鎖されていたわけでも、孤立していたわけでもなく江戸時代を通じて日本の外交や政治経済は常に出島・琉球・松前・対馬という「四つの口」を通して東アジア諸国と密接な関係にあり、幕府の外交政策は東アジアの地域経済にとっても極めて重要な役割を果たしていた。「鎖国」は国家方針を示すフレーズとしても対外関係の実態を示すフレーズとしても的を得ないものであった。「四つの口」は「鎖国」の例外ではなく、それこそが幕府の方針であり、それは現在でも日本に外国人が入国する時は空港や港など限られた口からでないと入国できないのと同じようなヒト・モノの出入りを管理する入管体制だったという。
著者によると江戸日本を「鎖国」とみなす考え方は江戸時代初期にはなく、18世紀後半にロシア船の来航が相次ぐようになってから松平定信が「鎖国」こそ幕府開闢以来の伝統であると表明した一種の過去の書き換えに由来するという。本書は江戸時代を通じて繰り返された朝鮮通信使の来日や日本―明・清関係、鉱物資源流出規制、アジア情勢に関する様々な情報収集、日本とアジアの双方を視野におさめた徳川吉宗の経済政策など興味深い事実を満載しつつ、江戸日本が実は「鎖国」というイメージからほど遠いものであったことを示してくれる。また、後半の章ではそうした世界との交流の中で培われる日本人の異国認識が記録画や屏風など様々な史料を基に紹介されている。最新の研究成果が一般向け通史の形で分かりやすくまとめられ、江戸日本の成熟した政治・外交・経済の実態がよく伝わってくる好著。
鎖国という錯覚
★★★★☆
幸運にも残った文献資料から、そして農業国日本の思い込みからこの国の歴史を見て、確かに“鎖国”と読める時代があった。
西洋は優れていて日本は西洋に劣る。それは江戸時代という国を鎖した愚かな時代があったからだ。
いずれの言説も素朴に通用することは少なくなったのだろうが、あらためて、まとめ語りしておく必要はあるのかもしれない。この意味において多様な視点と事実からまとめられた好著と言って良いと思います。
第四章 描かれた異国人
第五章 朝鮮通信使行列を読む
第六章 通詞いらぬ山 富士山と異国人の対話
の3つの章は読んでみるに値する新鮮さと内容をもっていると感じました。
悪意に満ちた本に出会いました。
★☆☆☆☆
久しぶりに悪意に満ちた本に出会いました。この方は本当に日本が嫌いなんですね。
この本の良いところは徳川幕府の時代、この国は建前が全ての時代であったということをはっきりさせていることです。そして、読みやすいことです。
悪いところは、なぜキリシタンが弾圧されたか良く調べてみれば分かるはずです。秀吉が「信教の自由を守ること」を宣教師たちに書き残している理由を考えてみてください。彼らは守らなかったからです。彼らは港を要求しています。カソリックを追い出すのは当然であり、それ以外の国はオーケーなのも頷けます。
トビくんはすごく感情的になっています。中華思想丸出しです。
最後の明治六年前後のことも半島に都合のいいところばかり抜書きしており、チョイとこの時代を勉強していれば明らかに嘘であることがはっきりします。
もうちょっと真面目に明治維新史を勉強したらいかがでしょうか。
反日の教科書にうってつけの本だと感じました。
「現在を制するものは過去を制する」
★★★★☆
このシリーズの目的に沿って、新たな気づきを提供している本。
学術の世界はいざ知らず、「鎖国」は鎖国という漠然としたわたくしの思いを、
地図やら、浮世絵、屏風絵を手がかりに考えをめぐらすことができました。
「現在を制するものは過去を制する」、この本の「鎖国」論議から学べました。