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第四解剖室 (新潮文庫)

価格: ¥740
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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   短編恐怖小説14編の収録順を決めるのにトランプを使ったという打ち明け話で、本書『Everything's Eventual』を書き始めた、稀代のホラー作家スティーヴン・キング。恐怖が幕を開ける「Autopsy Room Four」の冒頭から、「Luckey Quarter」の最後の1ページまで夢中で読むうちに、読者はすっかり圧倒され、やはりキングは人知の及ばない力に導かれていると本気で信じてしまいそうになるだろう。

   本書は、1993年刊行の『Nightmares & Dreamscapes』(邦題『いかしたバンドのいる町で:ナイトメアズ&ドリームスケープス I』、『ヘッドタウン:ナイトメアズ&ドリームスケープス II』)以来、久々の短編集だが、ここにはキングの魅力がそのまま詰まっている。短編という形式は、ごくありふれた設定(ガレージセール)や昔懐かしい思い出(少年時代に魚釣りに遠出したこと)を素材に使って読者を戦慄させる、キングの手腕がまさに発揮される場だ。数あるキングの短編でも傑作に数えられる作品もいくつか収められていて、なかでもO・ヘンリー賞受賞作や「Riding the Bullet」は当初e-Bookとして発表され、既存の出版界に終焉を告げる事件だと一時騒がれた。例によって、どの作品も1ページ目から、現実からややはずれたキング独特の世界に読者を引きずりこみ、わずか50ページの長さで、ちまたにあふれる多くの作家たちの長編より、はるかにみごとに登場人物や雰囲気を構築している。

   この短編集でキングの熱狂的ファンがいちばん注目するのは、「The Little Sisters of Eluria」(邦題「暗黒の塔-エルーリアの修道女」)だろう。際限なく広がり続ける「暗黒の塔」世界を舞台にするこの作品は、ファンタジー・アンソロジー『Legends』(邦題『伝説は永遠に(1)ファンタジィの殿堂』)で最初に発表された。「暗黒の塔」シリーズ第1巻より以前に設定を置き、いかにも怪しい看護婦たちの世話になる負傷したガンスリンガー、ギリアドのローランドが描かれる。ほかに、ある女性の悲劇の物語「That Feeling, You Can Only Say What It Is in French」、幽霊ツアーガイドブックのライターがついに本物の幽霊に出会う「1408」、ずっと夢見ていた仕事に就いた少年を悪夢が襲う表題作「Everything's Eventual」、血なまぐさいラストが驚愕を誘う離婚劇「L.T.'s Theory of Pets」などの作品が収録されている。

   また、短編という芸術が失われつつある現状についてのまえがきや、各作品にこめた著者の意図、どこで着想を得たかなどの短い裏話も楽しめる。「親愛なる愛読者諸兄姉よ」とキングが直接読者に呼びかけるときの例にたがわず、その語調は、キャンプファイヤーを囲んでこれからお化け話を始めようとしているキャンプ指導員のそれだ。「みんなを怖がらせるのはちょっと気が引けるけど、手加減はしないよ」と。キングの燃やすたき火に集まったキャンパーのみなさんは、彼の警告に耳を貸したほうがいい。なにしろ、闇夜にまぎれてキングが人を驚かそうとするときは、窓に当たった小枝の音にぎょっとさせられる程度ではすまないからだ。(Benjamin Reese, Amazon.com)