インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

イスラム教入門 (岩波新書)

価格: ¥840
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
Amazon.co.jpで確認
   宗教学者は「イスラム教は戦闘的ではない」と言うが、いま平均的日本人が抱いているイスラム像は、テロリストをかばう戦闘的な「タリバン」ではないだろうか。しかし、本書はこの過激なイスラム原理主義集団については何も言っていない。本書の初版は1998年、タリバンのアフガニスタン制圧(1996年)からわずか2年後のことだから、この段階では、アフガニスタンのイスラム武装勢力は、まだソ連軍に抵抗する「アフガン・ムスリム」にすぎなかった。その武装勢力がいきなり「タリバン」となって「ジハード」を叫んでいる。世間的感覚でいえば「イスラムは戦闘的」が本音だろう。タリバンは異端である、と言ってしまえば簡単だが、はたしてそうなのか。

   本書によれば、日本語で「聖戦」と訳されている「ジハード」は、神の定めた正義を実現するために、福祉を向上させ、地上的拡大をはかる「努力」のことだという。7世紀、ムハンマド(日本で一般にいわれているマホメット)が「アラブの島」で宣教を始めたころのイスラム共同体は、商業権益と生活権を守るために戦わざるをえなかった。15世紀以降は、ヨーロッパ世界がイスラム世界を植民地ないし半植民地として支配するようになり、以来今日まで、イスラム教徒は抑圧者と戦う「努力」を強いられてきた。ヨーロッパ世界とイスラム世界の関係を理解するうえで示唆的なのは、日本で最初にイスラム教に共感したのが、山田寅次郎、若林半、頭山満、内田良平、大川周明のようなナショナリストだったことである。彼らは西洋列強(キリスト教世界)に抑圧されたアジアの諸民族(イスラム世界)に東洋人として共感した。本書冒頭の章「イスラム世界と日本」が指摘するこの事実は、今のイスラム世界を見るうえでも重要な視点ではないだろうか。

   本書は、タリバンには触れてはいないが、「ジハード(努力)」が「聖戦」に変移していった歴史状況と、タリバン的政治運動を生むイスラム世界の精神状況を、あくまで客観的に解き明かしている。(伊藤延司)

宗教学の立場からの網羅的概説書 ★★★★★
 イスラム教の内側からの視点をも生かそうとして、1970年代にその共同体思想に注目した、1936年生まれの宗教学研究者が、イスラム教についての宗教学的な基礎的知識を網羅した概説書を企図して(おそらく実現)、1998年に刊行した本。メッカの商業的発達と個人主義化、アッラー信仰の一神教化の中で登場した、没落した名門の出のムハンマドは、最後の預言者としてメディナにイスラムの宗教・生活共同体=ウンマを成立させ、メッカを軍事占領した。その後の正統カリフ時代(コーランはこの時期に編集された)、ウマイヤ朝時代に、イスラム世界は征服によって急拡大し、アッバース朝時代には聖法の代弁者ウラマーと政治権力者カリフとの協調的関係=イスラムの古典的政治形態が成立した。しかし間もなく、カリフの傀儡化と地方勢力の自立化が生じ、アッバース朝滅亡頃からイスラム神秘主義が台頭してくる。著者はこうした歴史をたどった後、コーランの成立事情と信条、ムータズィラ派の登場に伴うイスラム神学の確立(スンニー派の六信などへ)、イスラム哲学の展開、コーラン・スンナ(預言者の範例)・イジュマー(法判断の一致)・キヤース(類推)を主な法源とするイスラム法=シャリーアの内容(五行と法的規範)、諸分派(約9割を占めるスンニー派と、ハワーリジュ派、シーア派諸派、ドゥルーズ派、ヌサイリー派、アフマディー派)と神秘主義(スーフィズム)について簡潔に紹介する。最後に著者は、近代における西洋の脅威とワッハーブ派の影響力の増大の下、さまざまな内部改革の動きが生じ、イスラム世界が近代化と伝統回帰(イラン革命へ)の間で揺れ動くさまを描き、本書を締めくくる。聞き慣れないアラビア語の片仮名表記はやや分かりづらく、内容も専門的であるが、基本用語をきちんとおさえれば、三大宗教の一つの大枠が理解できる本である。
イスラームの重要なトピックが手際よくまとめられた中級者向け概説書 ★★★★★
「入門書」となっているがイスラームを全く知らない人には詳しすぎる内容なので、もう少し易しい本を先に読んだ方が良いと思う(講談社現代新書『イスラームとは何か?』や岩波文庫『イスラーム文化―その根柢にあるもの』など)。本書ではまずこの宗教の日本での呼称(イスラム教、マホメット教、回教)が吟味される。そして世界各地に広がるありさまや日本人との関わりに触れてから、この宗教の成立の歴史、『コーラン』による信仰の内容、実践としての礼拝作法、イスラーム法等について解説する。そして分派については、よく知られるスンニー派やシーア派だけでなく、ハワーリジュ派、ドゥルーズ派、ヌサイリー派、アフマディー派にまで筆が及ぶ。イスラーム密教と言えるスーフィズムの解説は、著者のもっとも得意とするものである。現代の人々を瞠目させているイスラーム復興の潮流、原理主義にも触れ、中級者向けのこの詳細な概説書は締めくくられている。
内容の充実した岩波の入門書 ★★★★☆
入門書としては、内容が充実していました。最初に読むには、少し内容が濃すぎるかもしれません。イスラムについてのある程度の知識を持っている人がイスラムの歴史を押さえていくのに適していると思います。何度か繰り返して読める本といえます。
中級者向けの入門書 ★★★★★
イスラム教入門、という本は数がありますが、その内容は「なぜ豚肉やお酒がいけないの?」「4人も奥さんが持てるって本当?」といったものが多く、イスラム教の表層を扱っているものが中心です。その一方で、さらに進んだ内容の本を探しても、専門家向けの個別実例研究ばかりで、両者の中間あたりのレベルを設定した本が少ないのが現状です。  この本は、そんな中間を埋めるのには適切な内容だと思います。「入門」と冠しながらも、読むために歴史学や西洋哲学の知識を必要とし、内容的には高度です。しかし、これまであまり論じられてこなかった、イスラムの思想体系を学ぶ上での入門書としては、最適ではないでしょうか。その点から、中級者向けの入門書といえましょう。