思うようにいろんなことがはかどらず、ノイローゼ気味の科学者・早崎。だがそんな彼の前に“もう1人の自分”が出現。最初は幻覚だと思い込む早崎だが、分身は実体化しており、早崎の仕事を陰で助けつつ思うがままに生き、早崎の願望をどんどん叶えていく。そんな分身に次第に早崎は殺意を覚えて……。
自分探しの旅をブラック・コメディーの資質で描いた作品。誰もが思い通りに生きたいと思いつつもできずにいる現代で、どう生きるべきなのか改めて考えさせられる作品だ。マルチ画面を駆使して本体と分身が同一空間にいることを観客に信じ込ませ、殺人シーンを引いた画で見せることで背筋をゾクゾクさせる。黒沢監督らしい“映画”ならではの映像演出が、恐怖と笑いをいい具合に合致させている。役所広司のニ役の演じわけも神業的。(横森 文)
もうひとりの自分
★★★☆☆
スランプでノイローゼ気味の研究者・早崎。ある日、彼は“もう一人の自分”と出会う。それを妄想だと思い込んだ早崎だが、“分身”は早坂のために陰で動き始める。自分とは対照的に伸び伸びと生きるもう一人の自分に、やがて早崎は殺意を抱く。
自分探しの旅をブラック・コメディーの資質で描いた作品。誰もが思い通りに生きたいと思いつつもできずにいる現代。分身は実体化しており、早崎の仕事を陰で助けつつ、思うがままに生き、早崎の願望をどんどん叶えていく。どっちが本当の自分なのか「混乱」「混沌」。多分、どちらも「自分」なのでしょう。ただ「良識」「道徳」の名のもとに悪しき「自分」は封じ込められているだけなのでしょう。最近「暴走する自己」を封じ込める「良心」「道徳」「倫理観」を持たない人達が増えているのでドッペルゲンガーはどんどん増殖していくんでしょうね。
毎度ながら役所広司という俳優のチョイスで「怖さ」が半減。「舞台劇」のようになってしまっているのが少し残念です。そこそこ面白いのですが…。悪い役所広司のインパクトが弱い。彼の「いいひと」のイメージが強さが難でした。
引き裂かれた自己の融解
★★★☆☆
直球サイコホラーかと思いきや、破天荒なブラックコメディでした。後半部分は無理矢理盛り上げた感あって、非常に残念ではあるんですけど、巻き込まれてしまえばそれほど苦ではありません。
私は後半部分の「両者」の変化に非常に興味が沸きました。彼らはそれまで担っていたキャラを多少なり放棄し、相手のキャラを背負い始めるのです。2つの「自己」から解き放たれ、一人になった(と判断した)彼らは、「自己」の再生に努めようとするのです。一方は「本能」を背負い、一方は「理性」を背負うことで。
「本当の」自分
★★★★★
前半部は正体不明のモノ、存在に出遭ったことによってそれまでの日常へは
二度と引き返せない、というCURE以降の黒澤映画の基本的なスタイルが見てとれます。
しかし今作はそういった正体不明のモノのによって引き起こされる心理的な恐怖よりも、
メッセージ性に重きを置いた内容になっています。
黒沢監督の映画はそのほとんどがホラーの型を借りたヒューマンドラマですが
今作はその典型です。
言うまでもなく、この作品におけるドッペルゲンガーは主人公の日々の生活の中で
抑圧されている自己の内面が表象化した一つの記号体です。
他のサイトでは主人公がドッペルゲンガーに入れ替わった可能性を指摘している
レビューもありますが、正直そんな事はこの映画の肝心な所ではありません。
どちらでもいいのです。
それが本々の早崎であろうと、ドッペルゲンガーであろうと、大事なのは
自分自身に対して嘘をついていない「本当の自分」であるかどうかということです。
冒頭に描写された人工人体の開発に明け暮れるが周囲のプレッシャーとスランプ、
ストレスのはけ口の一切無い日常でノイローゼ気味の早崎。
最後に進めば進むほどまるで嘘のようにあっけらかんとして開放感に満ちた表情に見る見る変わっていく。
ドッペルゲンガーであろうと無かろうとそれが「本当の」早崎なんです。
抑圧されていた自己の表象としての分身が、本当の自分を気づかせてくれる契機になった。
この変化に対して否定的な見方をすれば、自己の内側に潜み当人によって隠匿されていたエゴが、
もう一人の自分によって引き起こされた狂気によってついにコントロールできなくなり増長したという解釈もできます。
しかし個人的には、前述したように早崎の充実し明るくなっていく表情を見るに、むしろそういった側面より自らを偽る、
抑圧する事から自身を解放するというポジティヴなメッセージを感じ取れました。
少し前ですが、「空気を読む」という言葉が流行りました。
これは自分が置かれている場の同調圧力に屈するという事と同義です。
現代においては物心がつき小学校に入った時から常に周囲に馴染むことを迫られ、
生きやすく生活しようとすることが結果として自身を生きにくくしているという矛盾が往々にしてあります。
次第に本当の自分とは何なのか、自分は何がしたいのか、解らなくなっていきます。
様々な視点から捉えるができると思いますが、今作はそんな現代社会の病理をつき、
疑問を投げかけている社会派のヒューマンドラマという見方が一つ、できると思います。
黒沢監督の映画はそうしたメッセージ性を重視するあまり娯楽映画として破綻している作品もあり、
観る側にとって優しくないなーと思う事も結構あります。
しかし今作はそのあたりのバランスも上手く取れています。
映画を観た、というお決まりの充足感と、なんだか背筋がむず痒い、
黒澤映画特有の後に残る気味悪さ、両方が絶妙なバランスで感じられて中々楽しく観ることができた作品でした。
ユースケのはまり役
★★★☆☆
人を殴るときの効果音とか、車が出てくるシーン全般とか、
北野武のようだなあと思いながら見てました。
といっても後半だけですけど。
ユースケは良かったと思います。馬鹿を演じさせたら天下一品。
踊るシリーズのスピンオフで頭の良い役をやること自体が間違い
だと思うくらい「バカ」が様になってました。
一級ホラーとナンセンスコメディーの融合(ネタばれあり)
★★★★★
黒沢さんの作品は大方ホラーなので 今回も「ドッペルゲンガー」だからいつものような映画だろうなと見たらちょっと違う映画でしたね
話が進むにつれゆっくりとコメディーになっていきます 黒沢に良い意味で騙されました
僕はこういう裏切り方は全然嫌いじゃないんです 見たら近い将来必ず死ぬと言われるドッペルゲンガー
早川とドッペルゲンガーの性格が正反対なので 二人の会話を聞いてるだけで楽しい 映像も綺麗です
最後早川は死にドッペルゲンガーが現れ 機械を壊すところで話は終わります
ホラーではなくコメディーだと思って見れば絶対面白いです 僕もハマリました