仏教や禅に興味を持ってから数ヶ月にしかならない評者ですが、禅師の真摯な生き方、生き様に強く感銘を受けました。
著者や他のレビュアーも書いておられますが、涙が出るほど手の届かないところにいる人なのに、同時に私たちと変わらない普通の人という印象を強く受け、考えさせられました。
禅に関して疑問に思っていたことが、言葉でなく禅師の暮らしぶりから少しだけ分かったように思います。「何かしなきゃ、もったいない」と思わせられる本でした。

主観に走らないソフトな筆致、永平寺内部の下世話にならない描き方からして、相当お年を召した方が書いた本なのでは？という予想を裏切る年齢の著者で驚きました。禅師の生涯ももちろん凄いけれど、その描き方にも非常に好感が持てます。
山間の禅寺の空気、色彩、音、匂いが伝わってきて、DVDも見てみたくなりました。

禅僧からイメージされるような、一般人とかけ離れた感じはなく、
むしろ才能としては普通の人が、一生をかけてひたすらに一つの道を
極め続けた凄みを感じた。
きっと、長年の座禅によって培われた姿勢が、言葉を発さなくても
自然と周囲の人に強い影響を与えていたことだろう。

遥かに及ばないが、同じ日本人として、少しでも宮崎禅師の真摯な姿勢を
受け継ぎたいと思った。