一連のコラボレーション作品も聴かせてくれる本作は、1991年の(ジャパンの元メンバーのリチャード・バルビエリとスティーヴ・ジャンセンと組んだ)『Rain Tree Crow』、1986年の坂本龍一の『Heartbeat』、1989年の『Secrets Of The Beehive』を含むシルヴィアンの全アルバムから選曲されている。熱烈なファンのツボも見事に押さえていて、ジャパンの『Gentlemen Take Poloraids』に収録予定だった幻の曲「Some Kind Of Fool」の完全バージョンも収められている。シルヴィアンがジャパンで成しとげた成果の多くが巧みな計算に基づいていたことからも、こうして余分な音をそぎおとしたシルヴィアンのサウンドが聴けるのはなんとも新鮮な気分だ。
エレクトロニカとロックの両方を取り入れたオープニング曲「The Scent of Magnolia」は、その道のプロの多くを恥じいらせるほどの繊細さと知性によって滑らかな演奏を聴かせてくれるし、「Albuquerque」は大胆なコンセプトと魅力的なメロディーが華やかなバランスを保っている。本作はまた、シルヴィアンの変幻自在なスタイルを祝福し、その絶好の見本も紹介している。というのもシルヴィアンは、耳ざわりなバラード(不評だった「Ghosts」)、アヴァンギャルドなジャズ(「God's Monkey」)――バックサウンドの複数の楽器をシンセサイザーに置きかえた2曲――きらびやかな上質のポップスなどさまざまなテーマを常に渡り歩いているからだ。(Maxine Kabuubi, Amazon.co.uk)