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空海―生涯と思想 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥1,155
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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少し難しいですが、空海の魅力が十分伝わります! ★★★★★
空海についての複数のエッセイを一つにまとめたものです。
副題の「生涯と思想」に偽りなく、スケールの大きな空海の生涯と思想を学ぶことができると思います。

本書の特徴としては、複数のエッセイをまとめたものであるためにかなりの箇所が重複していることです。「またこの話かよ・・・」と思うことは多々ありました(笑)
ただし私自身はその重複のおかげで難解な空海思想を少しでも理解することができましたし、専門外の人にとっては何度も同じ説明がなされるのはかえってメリットがあるかもしれません(わかっている人にとってはうっとおしいだけだと思います笑)。

また、本書の親本は1984年に出版されたものであり、文庫版のあとがきで著者が最新の資料や学説が反映されていないことを認めていることには注意が必要でしょう。

単なる僧としての面だけではなく、文化人や教育者としての面もある空海の魅力を十分に伝えている良書だと思います。
コレクション監修者による空海随想集 ★★★★★
 ひところのオカルト・ブーム、マンダラ・アート賛美が通り過ぎて、密教そのものの原点を静かに見直そうとする気運が高まってきている。空海密教が放射している千変万化のまばゆいほどの光彩である。 
 本書の1「生涯と思想」は、日本仏教史における密教の位置付け、最澄との交流との交流からみた空海密教の立場と特質をふまえて、生涯と思想をグローバルに捉えたものである。
 2「文化人としての空海」は、絵巻のストーリーにそって見た空海の全軌跡、空海密教に大きな影響を与えた恵果との出会い、詩文を通して見た空海をめぐる周辺の人々、我が国最初の庶民の学校であった綜芸種智院の教育活動、以上に焦点を当てて説いている。
 3「空海の著作を読む」は、初めて空海の著作を読む場合の手引きになる。『三教指帰』24歳の著作。我が国漢文学史上の白眉と評される。
『性霊集』は、我が国における個人の詩文集としてはを最初の作品であり、平安初期の時代・社会・文化全般にわたる根本史料である。
 4「空海の聖地」は、空海ゆかりの高野山と四国八十八ヵ所霊場を紹介したものである。唐から帰朝の船中で、海が荒れたので無事帰国できたならば、修禅の一院を建立して報いることを神明に誓って、高野山を開創した。四国を訪れる遍路は、年毎に増えていく反面、若い人々との間には、遍路が一種のレクリェーション的意味をもって迎えられているが、全般的には空海の御後を慕うという厚い信仰に支えられている(雅)
空海の、多彩ゆえの多面ぶり ★★★★☆
日本の名僧で一番「頭がいい」のは、たぶん空海でしょう。人気は道元や親鸞に劣りますが、その時代で利用できる知識をできるだけ吸収したという意味で、弘法大師空海に勝る人物はいないだろう、と。なにしろ、24歳のときに儒教・道教・仏教を批判的に徹底的に考察し、しかもそれを優美な文芸風に仕立て上げた歴史的名著を完成させてしまったくらいですから。本書は、現代屈指の仏教学者である宮坂さんが、その日本仏教史上最大の天才について様々な面をとりあげた、エッセイ集です。

ただし、「エッセイ集」といっても、空海の思想はおそろしく難解な哲学体系であるため、一部の文章は、容易に理解できたものではありません。逆に、空海についてかなり詳しい方には、部分的に重複する個所のあるこの文集に、すこしうんざりしてしまうかもしれません。

しかし、同じことが繰り返し別の角度から書かれているのは、初学者にとっては重要な内容が把握しやすくて、むしろ便利です。また、本書では思想・哲学ばかりではなく、空海の文化人としての活動や彼に向けられた庶民信仰についてもいくつかの視点から述べられています。それらは読み物として非常におもしろいものがありますし、また日本文化に対する知見も広がります。