とても良かった
★★★★★
予想以上に面白く、絵も美しく、迫力があって面白かった。
特に前半は、神の偶像礼拝に対する厳しさや、民(人間)の愚かさが絵から良く伝わってくる。
モーセの怒りや悲しみ、失望といったものも、よく表現されている。
どれもとてもドラマチックで(そもそも聖書はドラマチックだが)、読みにくい旧約聖書が読みやすくされた感じで、とても評価できる。
より詳しく知りたければ、旧約聖書の対応箇所が各ページの下に書いてあるので、確認もしやすい。
旧約聖書の内容は、日本人なら大人でもぎょっとするものが沢山あるが、忠実ながらも、子供が読むのに「ぎりぎりセーフ」な表現の仕方になっていて、
その辺りは配慮を感じ、一応ホッとする。
出エジプト記の途中から、ソロモン王の即位までが描かれている。主な登場人物は、モーセ、ヨシュア、デボラ、ギデオン、怪力サムソン、ルツ、預言者サムエル、サウル王、ダビデ、とその周囲の人々。
お勧めです。
苦闘する男たち女たち
★★★★★
去年出た「T 創世」に続く第2巻。モーゼの旅からダビデまで。オーソドックス路線で美しい絵でつづられる物語はやはり迫力満点。
怪力サムソンと美女デリラのエピソードはたいへん有名であるが、本で読むと呆れるほどバカに思えたサムソンが、バカなりに可愛く健気に見えた(似たようなことは、『ニーベルングの指環』のジークフリートにも言える)。「悪女」デリラにもまたそこはかとない哀しみが感じられる。
この巻で最も劇的なのはダビデかもしれない。聖なる使命を帯び、支配者となり、しかし友とは死に分かたれ、妻とは溝ができ、不貞におののき、愛息に背かれて嘆き悲しむ。その陰で、やはり功績をあげながらも心おごり、ためにダビデを狙い、良心と狂気の狭間で苦しむサウル王もまた印象深い。
筋肉男も苦悩男も、、もちろん女たちの勇気も苦悩も、あずみ椋の描きだす幅は広い。