この文庫版(元々は「豪華版」と名付けられた四六版)ではどうして時代順の収録ではないのかという謎については、23巻の解説に「最近のファンには初期の絵柄は違和感があるだろうから」というようなことが書いてあります。その理由には私はイマイチうなずけません。絵柄の違和感よりストーリーの違和感の方がどう考えても大きいからです。
そんなわけで、この文庫で初めて009と出会う方は、まず5~10巻を順番に読んで、それから他の巻に進みましょう(他の巻はどの順で読んでもさほど問題ありません)。
こう書くとこの巻に不満があるように取られるかも知れませんが、順番さえ守って読めばこの巻ももちろん大傑作です。黒い幽霊団との戦いを一旦終えて、神話や伝説にまつわる謎を調査する009達の活躍が描かれています。神話や伝説に関して009達がウンチクをたれたりして、初期には不良少年だったはずの彼らが何だかインテリっぽくなっており、初期とはまた別の魅力が満載です。
もう一つは、神話上の神々や、不老不死信仰はまさに人体のサイボーグ化に他ならない、と読みとれるのもあるのではないかと思います。だからあえて、象徴的なサイボーグの在りようと悲しみをまず読んでもらうために、神話・伝説編を巻頭に編集したのかなあ、というのが私の憶測です。
誰がために戦う・・・? そんなことは考える間もなく、00ナンバーは自分たちの正義と思うところを戦います。誰がために戦うことができない皆のために。ありふれた日常がありふれたままであるために。
テレビアニメではあんなにかっこ㡊??かった00ナンバーがそれぞれの悲しみを背負っているのに気づいて、ファンは大人になっていくのだと思います。
私も、大人になっていました。
でも、そんな単純なモノじゃなかったんですね。悪者とはいえもとは人間、その人間の邪まな心が目覚めさせ、生み出した怪物たちと戦い続けるサイボーグ戦士たち。人間を守るためとはいえ、人間がいる限りその戦いは果てしなく続いていく・・・。いろいろと考えさせられる、重く深い物語だったんですね。
この秋田文庫版第1巻には、北欧神話に題材を得た「エッダ編」をメインに「グリーン・ホール編」「怪奇星編」「ディノニクス編」の4編がおさめられていて、どれもメッセージ性の強いものばかりです。特に「怪奇星編」は、サイボーグ戦士が009と私のヒイキの006の二人しか登場せず、さぞや006が大活躍を、と思いきや、これが全く活躍せず、いつものままの006でした(笑)。
マンガを読んで人の在り方を考える、などと言うと大げさでバカバカしいと思われるかもしれませんが、これを読むことでどう感じるか、サイボーグ戦士たちに人間性を問われているように思えてなりません。