三文オペラ?
★★★☆☆
とりあえずどの小説にもオペラを小道具として使っている感のある島田が、モーツァルト
『ドン・ジョヴァンニ』のコンサートをめぐる群像劇を仕上げた、それがこの作品。
冒頭、第1章、若い女子の文体を表現しよう、とでも思ったのか、少しばかり不明瞭に
仕立てようとしたら、とてつもなくひどい日本語に仕上がってしまった、という感じ。まあ、
実際の女子は絶対こんな書き方しねえよな、本当に女知らねえよな、って代物。眩暈がして、
この調子で続ける気か、とうんざりしかけたが、幸い、そうではなくて、多少安心。
巻末を見れば分かるが、『婦人画報』での連載の単行本化。
なるほど、と言うべきなのか、「きょうも現れるのかな? 音楽の霊」といかにも予感
めいたことを喋らせてはみるものの、明らかに小説はそれとは別の方向に走り出す。
行き当たりばったりのやっつけ仕事、とまでは言わない、本当はとても言いたいけれど。
かと言って、ひどい、と本を投げ捨てたくなるような出来でもない。そこそこ楽しめはする。
ただし、この小説で何かを語れ、分析しろ、と言われても、それは無理です、としか私には
言えない。
暇つぶし以上でも以下でもない出来映え。
どう転んでも後世に島田の代表作などと評される水準にはない。
一気読みしました♪
★★★★☆
島田雅彦はなんとはなく気になっていたんですが、いままで一度も読んだコトがなかったんですね。なんとなく気難しい本じゃないの、みたいなイメージがあって。
が。が。こちらの本は、見事にソフトマイルドな女性向き、かつ、まさにいくつもの「佳人の奇遇」がオペラ「ドンジョパンニ」の公演されるその日に焦点をあわせて展開し、ラストのオチへとぴたりとすべて着地するその作者の手腕、音楽への造詣の深さを垣間見せるクラッシック豆知識も織り交れて、論理的でわかりやすいのに繊細さも感じさせる文章表現&人物造形の妙を堪能できました。
それぞれのキャラクターが個性的なくせに、親近感もちゃあんと備わっているのも、すごくイイ。
極度のあがり性の天才テノール歌手の”辻アンドレ”・アンドレのマネージャーをすることになった元銀座のナンバー2ホステス”まどか”・現代最高の指揮者でありながら、ドンジョパンニの生まれ変わり?みたいな超プレイボーイの”マエストロ”←どっかでこのキャラは見たことがあるような気もするけど(笑)・失業保険も切れてお金もソコをついてしまい路上デビューする前にオペラでも見ようとやってくる”ウエシマ”
ワタシが個人的にスキなのは、大学で哲学を教えている変わり者のの非常勤講師オオタケンタとその幼馴染の春香のエピソード。若干マニアックな二人の相手へのコンタクト方法が結構ツボでした(笑)
サントリーホールで上演される「ドンジョパンニ」でそれぞれの登場人物たちの運命が微妙に変わっていくラストには、思わず「ウマイゼ!」とため息をついておりました(笑)一気に読めて楽しく、読後感もすがすがしい一作です!