哲学辞典の古典的名著
★★★★★
発売当時に購入したものですが、この辞典がいかに優れたものであるかを最近認識しました。執筆者のレベルの高さに感服しています。
きっかけとなったのはスピノザの倫理学を英語で読もうと思ったことに始まります。私はラテン語がだめなのでせめて日本語よりは近い英訳を読み始めたのですが、いきなりはじめの部分から躓いてしまい、例えばスピノザの”substance”という用語の使い方がいまひとつ理解できません。ラッセルの西洋哲学史を読んだときは何となくわかっていたつもりでしたが、スピノザの倫理学ではご存じのようにこの部分がわからないと先に進めない構成となっています。そこでOxford Dictionary of Philosophy (Second Ed. 2005)を購入して基本的な用語を調べてみました。この辞典ではアリストテレスの定義を中心に説明してあります。この岩波の哲学辞典では、アリストテレスに始まり、デカルト、スピノザ、バークリ、ヒューム、カントにいたる概念の発展が簡潔に述べられています(英語から調べた結果)。
20年以上も前にでたこちらの辞典のほうが簡潔かつ包括的に説明されているの驚いたと同時に、このあと改訂されていないことによる誤解も多いのではないかと思います。古代から近代にいたる広い視野を簡潔に示す辞典としてすぐれたものではないでしょうか。
マルクス、そして唯物論を研究したい人のために
★★★★☆
コンパクトな辞典としては重宝しますが、取り上げられている用語が、少々古い感じがし、また用語の説明も簡略化してあり、現代の哲学的素養のないものにとって説明が「難解」であります。たとえば、「認識」ひとつをとっても「作用と成果との両方をさす」とありますが、「作用」「成果」については説明がありません。人名も主に「正統派的」「主流派的」マルクス関係の人が多いようです(驚くことにベルンシュタイン、トロツキー、ルクセンブルクの記述がありません)。
ただ、マルクス主義、唯物論、物象化などマルクス関連の用語は充実しているように思えます。したがって、ヘーゲル左派からマルクス、そして戦後のマルクス主義の哲学、戦後史などについて興味を持つ人には必須の文献でしょう。
マルキスト解釈
★★★☆☆
マルキストの辞典です。なので、共産主義的な解釈の説明が多く、歴史的には価値があるのですが、一般的普遍的な辞典ではないです。大辞典だと共産主義はこの用語についてこう考えている・・・という小見出しが、この辞典では大見出しです。「道徳」についての項目なんて「道徳」はもともと慣習から発展したものであるのに、「道徳は資本家と労働者の関係からできた階級道徳である。」と言っています。お部屋に一冊あると便利は便利なのですが・・・。正直なところ、どうしても最後は大辞典を頼ってしまいます。
使いづらい
★☆☆☆☆
正直、使いづらいです、この辞書。 私が哲学初心者だとはいえ、1979年から改定もされておらず、用語も解説も古い。79年以後の哲学について調べるにはとても不向き。 (例えば、エピステーメーについても、プラトン的な意味で解説してあって、フーコーについての言及がない)
小型なのはありがたいので、次回大幅に改定されたならいいかもしれませんが、現行の版では買うことはお勧めしません。