グローバル化に多角的にアプローチする
★★★★☆
本書は、グローバル化について多面的に分析したものである。現在「グローバル化」がさかんに語られるが、それがいかなるものなのか、それは何故進んでいるのか、それによる影響にはどのようなものがあるのか、グローバル化時代のガバナンスはどうあるべきか。これらの問題に答えを提示しようとする。
序論において、コヘインとナイによるグローバル化の実態についての概説があるが、これは優れた包括的議論であるとともに本書全体の解説ともなっている。以下、各章においてグローバル化と経済、国家、環境、文化、通信、法律、NGOなどの関係について詳細な議論が展開されるが、序論を読んでから挑めば、初学者でも充分に理解できる。
上に示したように、本書はグローバル化について極めて様々な観点からアプローチしている。グローバル化という現象を精確につかむためにはこのアプローチは不可欠であろう。解説者である内田孟男氏も指摘されるとおり発展途上国(グローバル化の負の側面を最も受けやすい立場である)からの視点の比重が相対的に低いことは否めないが、それでもグローバル化というものがいかなるものかを理解し、グローバル化に対する自分の姿勢を考える上で本書は極めて有益であろう。