色刷りではないし、図表の類は一切使用されていない。しかし簡潔な記述による洗練されたシンプルな構成は非常に分かり易い。学説の整理に重点が置かれており、問題提起→Ａ説、Ｂ説等の紹介→どの説を採るべきなのか、といった感じで見やすく段落分けされているので、自分で内容を整理してノートを作ったりするのにもぴったりである。

債権総論の該当範囲内の民法の条文に関してはほぼ全て記述がされており、初学者向けの教科書ではカットされたり、簡単に紹介するにとどまるような条文に関してもかなり詳細に説明されているほか、特別法に関する記述も厚い。

反面、やや詳細な論点（例えば内田先生の教科書だと【もう一歩前へ】の所で詳しく解説されているような部分）に関して、判例の結論だけを紹介するにとどまるなど、ちょっと物足りない部分もある。我妻先生の本がよく引用されているので、我妻栄「新訂債権総論」を手許に置いて適宜参照すると、より理解が深まるだろう。