ガユスの幸は薄いけど、ボリュームと話は厚いです
★★★★★
こちらは角川スニーカー文庫で出版された短編集「災厄の一日」の加筆修正&書き下ろしが加えられたガガガ文庫版短編集で、「災厄の一日」に収録された中でも特に人気が高かった、食事の席での他愛ないゲームのはずがいつしかと言うよりあっという間にガユス達参加者それぞれの生命と尊厳をかけた戦いとなった「禁じられた数字」や、モルディーンと十二翼将達によるサイドストーリーだけどガユス達よりもライトノベルファンタジーの王道に近い感じの(でもやっぱりハードでシビアな展開もある)「始まりのはばたき」も加筆修正された上で収録されてます。
以上の他にも書き下ろしが2編入ってまして、「幸運と不運と」では借金で霊感&マルチ商法グッズの工場に送られたガユスが次第に壊れていく様が生々しいですし、「刃の宿業」でギギナを含む剣と斬り合い殺し合いにに人生を捧げた、と言うより人生そのものと化した、常人には理解しがたい、と言うか理解してはいけない気がする生き様が、激しいアクションシーンを伴って描写されてます。
長編と同じように、ほとんどの話でガユスが幸運と大金に縁がなく幸の薄い有様がしばしば強調されて描かれてますが、それでも生きていかなきゃいけないと、己の能力を振り絞って懸命にあがく様が、私達の生きている現実とも共鳴して、一種ニヒリズムにも似た気持ちにさせてくれます。