転喩、換喩、etcなどという専門用語も確かに出てきますが、それらを知らなくてもなんとなく分かりますし、それほど頻繁に出てくるわけではありません。
翻訳というより言語の問題、時間論など、専門的に深く突っ込んでいないのにも関わらず、そのエッセンスだけを鋭く抽出し、読者に考えさせる問題提示は正に巧み(匠?)で、論文集的にテーマが(金から落語まで)多岐に渡るぶん、それだけ考えられる要素がたくさんある、ということで、充分楽しめます。
しかし、内容は非常に深い。まさしく記号から、金から、トイレの看板から、なつめそうせきから、罪と罰から、色々な切り込み方で、言葉というものをぶったぎる。
比喩の様々な用法にも触れられており、実社会でも色々つかえそうである。
たとえば、転喩と比喩とカン喩などを混ぜて書くと、
冒頭の「この本は有名かな」が
「水を見ないでアフリカを旅するような度合いで他の書籍で見受けられる本とは様相をことにする」みたいな感じになるかなぁ、適当だが。
ともあれ、ウィットに飛んで学者だが市井の研究者的なおもしろさ。
罪と罰の翻訳を読むことは、シニフィエは等しいがシニフィアンは異なる。
この指摘には、はっと思わされた。