現代哲学の最良の入門書
★★★★☆
1)何時もながらの逃げも隠れもしない真正面からの解説。でも、端寄ったり、未消化的な原典からの引用は一切無く、咀嚼した上で、飛躍無しに丁寧に説明してくれる。
2)構造主義と解釈学、これにラッセル批判とガーダマーの先行者としてのハイデガー解釈を加えて、結果的に現代哲学の「背骨のある」入門書になっている。構造主義の紹介は、基本的にニュートラルなもので分かりやすいだけでなく核心を伝えてくれる。その後で、リクールを引用しながら、構造主義の哲学的な限界を示唆。尤も、構造主義の本来の意味を貶めるものではない。「構造」の根底に「解釈」無くしては「構造」の抽出は出来ないという点は、何となく思っていた点をクリアーにしてくれる。
3)解釈学は、ガーダマーの「真理と方法」の解説になっている。翻訳も未完で長く日本には紹介の無い重要な書物のエッセンスを紹介してくれることは、非常に有意義だと思う。解釈学と言えば、シュライエルマッハーとディルタイが有名で、ガダマーさえもその後裔と勘違いしている人も以前はいたのだが、こうしてみると、むしろヘーゲル=ハイデガーの系譜の復活と発展であることが分かる。本書に触発されて、「真理と方法」を読んでみたいと思った。
ラッセル批判は、たしかに、ラッセルや論理実証主義系統が、一時期、我が物顔に、ドイツ古典哲学などをとっちめていた時代があったので、ここぞとばかり批判したくなるし、本書もその傾向があるが、今にして思えば、ラッセルの批判や考えは勇み足があっても相応に妥当なことが多く割と良識的なことは多いと思うのだが。。。