だまし絵の魅力と現代性
★★★☆☆
ほかの方のレビューにもあるように、「だまし絵」を視覚的トリックを利用するエッシャーのような作風ではなく、「本物そっくり」でありそれがさらに画家のトリックがしかけてある作品と定義している。とりあげられている作品の多くは、15〜17世紀のイタリア、オランダの作家たちである。章立ては
序 本物そっくり
1 建築空間の偽装
2 蠅と張り紙
3 加速するゲーム
4 壁ガンと変装
5 棚の現象学
6 描かれたカーテン
7 表層の戯れ
8 状差しという意匠
9 ぶらさがるオブジェ
10 これはだまし絵ではない
章に沿ったテーマを中心にして、多くの図版があり、楽しめる。面白いのは、これらの作品の主題は、宗教的なものが多い。(それ以外もあるが)しかし、たとえば、いかにも「これはただの絵なんですよ」というように、わざと張り紙がしてあったり、カーテンレールまで含めたカーテンが描かれている。
ただ本物そっくりに描かれた絵ではなくて、二次元の絵画であることを作家がわざわざ示しており、まさにモダンアートといえる。そのアイロニカルな視点が現代性を獲得しているといえます。
どこがだまし絵?
★★☆☆☆
この本に掲載されている絵はどれも素晴らしい絵なのですが、どこがだまし絵なんでしょうか?本のタイトルからすると、エッシャーのだまし絵を想像していたんですが、掲載されていた絵はほとんどが静物画です。
物体を本物そっくりに描く”写実主義”や、いかにも向こうに物体があるように見せる”遠近法”というテクニックをあくまでも”だ・ま・し”と呼ぶのであれば、ほとんど全ての絵がだまし絵になってしまうでしょ?
ちょっと騙された気分だ。
騙された
★★★☆☆
わたしはM.C.エッシャーのような錯覚の騙し絵を想像して購入して
しまったものです。この本の絵は一つ一つは素晴らしいです。解説も
よく書いてあるし、なんとなく不思議な気分にさせてくれます。
しかし、仕方ないことですがプリントが小さすぎて一切騙されません。
錯覚で脳を騙したいと思っている方は違った本を購入された方が
良いかと思います。
絵画をおもしろく見るための本
★★★★★
日本でだまし絵といえば、エッシャーなどがすぐ取り上げられてきた美術史を塗り替える一冊。本来の「だまし絵」とはなるほどこういうものかと、教えられる。だまされることを知りながら、だまし絵に見入る。著者の精緻な観察と卓抜な見解による、「絵画をおもしろく見る」ための本。この本を読めば、芸術に関する物の捉え方が変わってくるはず。知的好奇心を満たしてくれること間違いなし。必見。
memento・moriに魅せられて
★★★★☆
この本のなかにmemento・mori(死を忘れるな)に関連した絵を多く掲載していて、どの作品も人の人生すべてを想起させるほどすばらしいものです。
他の作品もトロンプルイユ(だまし絵)のおもしろさが伝わる解説と一緒に載っており大変すばらしいものです。
より多くの人にこの本を読んでいただき、だまし絵を通じて絵画に感心を寄せていただくこと心から望んでおります。