クリシュナムルティのノートブック
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「クリシュナムルティの日記」などの本と同じように、クリシュナムルティが個人的につけていた手記をまとめて出版したものです。本書に特徴的なのは、「プロセス」という現象について、体験しているクリシュナムルティ本人が記録をしているということです。
この本には「プロセス」については、特に何も説明はないので「クリシュナムルティ 目覚めの時代」という本に詳しいいきさつがありますので、そちらを参考にするのが良いでしょう。
内容はクリシュナムルティの感性をうががわせる自然描写、そして教えのエッセンスがつまった素晴らしい内容です。
「拡大完全版」とありますが、これは初版発行後に発見された原稿が追加されたことにより、以前の本よりも、テキストが増えていることを意味します。英語ではフルテキスト・バージョンといってます。
翻訳をよくみてみると、いろいろな意味で気づくところが多いです、疑問な表現を含む例文を挙げてみると、たとえば、
「瞑想が開花するのは善事です。」(クリシュナムルティ・ノート 285ページ)
「瞑想の開花は善である。」(クリシュナムルティの神秘体験310ページ)
直訳的な「神秘体験」の訳のほうがまだもとの意味をすこし伝えているとおもいます。
実際には「開花すること」が「よい事」であるとはいっていません。
本当は「瞑想を開花させるのは善性である」といっているので、だからその後の文章が”その善は時間のなかで集められる徳ではない”と続くのです。「善事です」ではなく、goodnessが意味上の主語です。
しっかりと意味をとるためには、本書のほかに『クリシュナムルティの神秘体験』(めるくまーる社)の翻訳を参考にするか、英語の原文を確認する必要があるでしょう。
クリシュナムルティ・目覚めの時代