《操り》テーマの「型」のオリジナル
★★★★☆
ヨーク家の莫大な遺産の相続権をもつ四人の相続人のもとに、
アルファベット一文字が記された奇妙な形のカードが次々と送られ、
そのたびに、送られた人間が殺されていく連続殺人事件が発生した。
のちに、カードを送っていたのは、“Y”と名乗る者から手紙で指示を
受けた、ヨーク家の下男ウォルトであることが、判明するのだが……。
果たして、“Y”とは何者なのか?
本作は、《操り》テーマの新機軸を打ち立てたといえる作品で、
のちに、本作の趣向を導入した作品が、山ほど作られました。
そのため、現在の目から見ると驚きはありませんが、
当時の読者には、かなり衝撃的だったと思います。
冒頭ではエラリイが、科学捜査が発達したことにより、自分のような探偵は、
不要になったと嘆いているのですが、“Y”という科学捜査を無効化する、
新しい犯人像(「神」!)をつくり出すことで、作者が本作で、“名探偵”
延命の可能性を懸命に模索している様子が伝わってきます。