古事記の下巻です。

上巻の神代の時代、中巻の英雄の物語とは違って
下巻は天皇の血を繋ぐ、人間くさい物語が主となっています。

仁徳天皇の皇后イワノヒメ、専制君主の雄略天皇は強烈です。
同時に専制君主の戒めとしてこの物語は描かれたのかなと思える。
後は皇位継承の難しさをも後半では描いている。
何度直系が絶えても傍系で繋いでいく帝。
（傍系といっても天地開闢の神様の直系にもあたるのですが）
天地開闢より続く神々の血を伝える為に。
そして、人の世の中で生きていくために・・・。

若い頃は、神々の物語やヤマトタケルの物語に夢を見て
この古事記の人の世の時代の部分を避けていました。
でも、今読むと、人生の教訓と戒めが身に染みてきます。
若い方が読んで、面白くなくても、いつかは面白いとしみじみ感じる。
たぶん、その時が来ます。

そんな古事記の下巻です。

何とか読み終えた古事記。しかし、この書物は学者向けの内容で、
おそらく文学部なんかの学生さんなんかが研究するのに良い資料
かもしれませんね。
ただ、原文に近い現代語に訳された、非常にプレーンな文章に内
容の濃い解説や、語彙説明が記載されていて、良質な資料だと思
った。
同時に、私にはその原型をそのまま頭の中で咀嚼する教養が不足
しているのも痛感しました。次回は、入門書のような物で、神話
の世界に入り込んでみたいと思う。

下巻は、聖徳太子など、我々がなんとなく知っている歴史が始ま
る直前までが記されいる。竹田王子なんかが聖徳太子の話なんか
で出てくるもんな？

講談社学術文庫の古事記三巻の完結編。
適宜章段に編集されており、原文書き下しに現代語訳と解説がつく構成。
非常に分かりやすく、古事記理解の良い入り口となってくれる。

古事記も下巻となると、国生みの頃にあった人間離れした神話とはだいぶ趣を異にしてくる。
恋の嫉妬や権力争いなど、人間らしいせめぎあいが見えてくる。
倭王武に想定される雄略天皇は、この巻に登場。

本編から離れるが、著者の次田真之氏に感謝の意を表したい。
巻末のあとがき、亡くなる一月前の遺稿には、この本にかけた思いが溢れている。

講談社学術文庫の三巻本『古事記』である原文と全訳注のついた親切な編集で、本格的な古代史研究にも利用できるし、日本神話を語った文学ジャンルとしての古代文学の読み物としてもオススメである。原文をまとまった内容ごとに区切って書き下し文に全訳注を添えるといった構成である。『古事記』は『日本書紀』と比べるとシンプルなので手が出しやすいと思う。古文が苦手の方でもこの学術文庫版なら気楽に「古事記入門」ができる。