わが国の歴史研究者の切ない知的水準がわかる駄本
★☆☆☆☆
10年以上前に買った本だが、今日たまたま本棚から発見。パラパラと眺めてみると当時の感想がよみがえってきた。
わが国の歴史研究者の、実に切ない知的水準がわかる駄本。
著者によれば、因幡の白兎と似たような筋の説話がインドネシアや東インド方面にもある。それをもって「兎とワニの話が、インドネシア方面から伝わってきた動物説話であることは、明らかである」
おいおい、古事記ができた6世紀以前に、どうやってインドネシアと行き来できてたんだよ。仮に民衆レベルの行き来がその時代にあったとして、逆にインドネシアの説話がむしろ日本産であるっていう可能性はないのかよ。
なんだかそういう、「とりあえず言ってみた」という感じの解説が切ない。更に、神代の国造りの物語の生々しい人間的色彩を、よくここまで無味乾燥に訳せたなと思わせる現代語訳が切ない。
命の賛歌
★★★★★
「古事記」の現代語訳付き本としては一番親切なのでおススメします。
日本の神話・・・いや正式の歴史書として作られたのがこの「古事記」です。
上巻のこの本ではイザナギイザナミの国づくりから山彦海彦の物語まで。
まず感心するのは日本の神々の生命力の逞しい事です。
生きていて自分の思いのまま生きないのは罪悪とも思えるほどの粋のよさ。
まず最初にイザナギイザナミの国づくり(子作り)から話が始まるのですが
その描写は本当に面白いです。人間の性は罪悪なのではなく
むしろ子作りは当然の行為で、恥じる事はないという当たり前の生。
原日本人の生き様こそ実は閉塞した日本を…否、世界を救うヒントがあるんじゃないかと
この本を読んで感じました。
純粋に読み物としても面白いので、全然日本の歴史に興味の無い方も是非お試しあれ。
難解でしたが面白い
★★★★☆
我が日本に大和朝廷が成立し、稗田阿礼が暗誦していた天皇の系
譜・古い伝承を太安万侶が編纂したものである。ただの昔話では
なく、神々が土のように我が国をこしらえたのか、伝説を語りな
がらも、比喩によって、部族の出自を示したりしている。日本書
紀と並び、重要な資料である事は間違いない。
日本書紀と重複したり矛盾したりする内容があるので、注意す
る必要があるかと言えば、それほど神経質になる事はない。
天照大御神の天の岩屋戸の話しや、稲葉の白兎の話しはこの上
巻にて記されている。
やたらな数の神様が出てくるのですが、覚える必要はないと思
います。ただ、なんとなく上巻は流してしまってくださいね。結
構面白いものだとおもいます。
古事記への入り口としてはこれが最適か
★★★★★
戦後、ましてオイルショック後世代の僕らにあっては
「天の岩戸」「ヤマタノオロチ」「因幡の白兎」等の説話を断片的に
知っているのみ、というのが大方のところである。
では真面目にこの「ふることぶみ」に触れてみようと思っても、
古語で編まれたその原文の表現や神々の名前はあまりに難解、
読めたとしても前提知識なしに正しく意味まで理解できるものではない。
当然注釈、願わくば現代語訳が欲しいと思うわけだが、この講談社学術文庫版の古事記は
その要請に応えてくれる一冊である。
1.原文は書き下し文に書き改め、
2.適宜章段に区切り、
3.章ごとに注釈をつけ
4.現代文の訳を付加する
といった編集方法となっているので、日本神話に対する前提知識がなくとも、ここから入って行ける。
現代語訳をただ読み飛ばすだけでも面白いが、注釈を丹念に追って行けば、
一見荒唐無稽に見える説話でも、その成立の背景が見えてくる。
民俗学の本などと併せて読むには持って来いの一冊で、
古事記に対する理解を深める入り口としては最適と言えるだろう。
この書を読む上で重要なことは、その説話の内容はもとより、
その成立の背景や、それらが大和朝廷により取捨選択され、
「古事記」として編纂されてきた理由なのだと思う。
上巻では、イザナギ・イザナミによる国生みから、いわゆる海幸山幸の説話までを収録。
神話の時代が活写されている
★★★★★
古代史に関する文献を渉猟するうち、古事記を読んでみたいと思って読み始めた。本書は古事記上巻(神代)をあつかっており、神話の世界の日本の神々は実に人間味にあふれていたことがよくわかる。古事記入門書の好書である。