80年代に入って最初にリリースされた、久々のソロ名義での作品。リンダのバッキング・ヴォーカル以外はすべてポールひとりで作業した宅録アルバム。この4か月前に起きた成田での逮捕劇を思い出す「フローズン・ジャパニーズ」なんていう曲や、シングル・ヒットした「カミング・アップ」などからは、YMOやディーヴォあたりの影響が汲み取れ興味深い。しかしその反面、長年のファンを少々戸惑わせたのも確かだろう。
それでも、ウイングス時代に書かれたという美しいバラード「ウォーターフォールズ」などは、いかにもポールらしいナンバーで、曲作りの上手さはサスガといった感じ。肩の力が抜けた自由気ままさが魅力のアルバムともいえる。(木村ユタカ)