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スノーボール・アース

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: 早川書房
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気に食わない奴とは口もきかない ★★★☆☆
これはNHKの週刊ブックレビュー(2004年4月4日放送)においてダンカンが「おすすめの一冊」として紹介した本である。そのときもダンカンが「学者同士の仲の悪さ」を面白く紹介していたが、お互いが罵り腐しあう、その人間と人間関係がこの本の魅力であろうか。

「全地球凍結仮説」を提唱するこの本の主人公ともいうべきハーバード大学教授ポール・ホフマンが感情移入できる愛すべき人物であるかというとそうではない。かなり癖のある人物だし、仮説反対派のコロンビア大学教授ニック・クリスティー=ブリックもお付き合いは勘弁してほしいといいたくなる人物だ。まあ、学問の世界というのは真実はひとつだから厳しくなるのだろうが、好きにやってくれと突き放したくなるところもある。

話が現在進行形で、まだわからない点を多く抱えた上での論争なので、仮説については十分理解できなくても話の筋は追っていけます。
この仮説を知らない人向けの本 ★★★★☆
スノーボールアース説とは、原生代の地球に通常の氷河期とはまるで違う星全体を完全に凍結する激しい氷河期が起こり、その結果多細胞生物が爆発的に出現したという仮説です。
本書の紹介にあるように、「大陸移動説」に匹敵するほど重要で、注目されている説ですが、本書はその中心人物であるポール・ハウマンを主人公にしたドラマ仕立てのサイエンス・ノンフィクションです。

いわゆる学術書ではなく、あくまで人間に視点を置いた本ですので、地質学を勉強する方には向きません。
主に学者がその説に至ったプロセスを、専門的な知識を持たない人にわかりやすく紹介する本です。
予備知識もいらないので、「スノーボールアース?何それ?」と興味を引かれた人は読んでみてください。
読んで専門知識がどうこうなるようなものではありませんが、単純に面白いです。

白球の地球が目に浮かぶ ★★★★★
深い眠りから覚めて氷が溶けていく、青い地球だけではなく白い地球も美しい、そんなイメージがきちんと伝わる。翻訳は誰だ? 50の理由の一つをまた掘り下げてしまった感覚、快感。
凍った地球をめぐるホットな論戦 ★★★★★
 スノーボール・アース(全地球凍結仮説)を、研究者たちの人物像とからめて紹介する。
 先カンブリア紀に、北極から赤道まで地球がほぼすっぽり氷に覆われていたというのがスノーボール・アース。さらに地球が凍結したことが、多細胞生物の爆発的発生の引き金になったという。地動説または進化論級のパラダイムの転換という触れ込みだ。

 地球がまるごと凍りついていたという説は、じつは19世紀の中ごろルイ・アガシという人物により示されていたらしい。その後も似た説が出ては消えを繰り返したという。ならば、なぜいまにわかにスノーボール・アースが再注目されているのか。それは、その根拠が揃ってきたからだ。この本は、現在のスノーボール・アース仮説の旗ふり役である地質学者ポール・ホフマンを中心に据え、彼らの示す仮説の根拠を仔細に紹介していく。とくに後半の、スノーボール・アース肯定派と否定派の論争は、やや込み入ってはいるが読みごたえ十分。高度なディベートの論戦を本を読みながらに体験できる。

 全体としては、原著の出された2003年現在も論争に決着はついていない感じ。とくに「スノーボール・アースが多細胞生物の爆発的発生の引き金になった」という説は、終わりの数ページで何案かが取り上げられているだけにすぎず、地質学から生物学への説の展開はまだこれからといった印象だ。

 このように、スノーボール・アースはまだまだホットなものなので、いまから「最新科学の波」をなにかひとつ追い求めたい方にとっては、この本がおあつらえ向きだ。これからも繰り広げられるだろう地球史をめぐる論争を、リアルタイムでフォローしていくための起点的一冊になる。

濃密に描かれた仮説形成のプロセス ★★★★☆
地球がかつて完全に氷に覆われていた時代があったという仮説がどんな経緯を通じて出来上がってきたのか。仮説があまりに突飛なだけに、ひとりの科学者の頭の中で一晩で思いつかれたなどというような甘いもんじゃないことがよく分る。この本は、「証拠」とは何か、ということを深く考えさせる。

スノーボールアース仮説に異議を唱える科学者たちの反論の努力までもがきちんと取りあげられているところがこの本の優れた点じゃないだろうか。科学者間の感情的反目も論争の重要な駆動力になっていたということや、反論者の出した証拠が同時にスノーボールアース仮説の新たな証拠にもなりうるという再反論に至る経過なども科学論的な含蓄のあるエピソードです。

ただやはり、先行レビュアーの方も仰ってましたが、地球の凍結状態が生命の大進化の引き金を引いたのではないか、というそもそもの(そして本書の)セールスポイントがほとんど論じられていないような気がするんですが。おそらく、この主張は進化生物学のコミュニティではまだ市民権を得てないのかもしれません。生命進化と全球凍結の関係がよく分らなかったので一点減点。