キャシー・マロリー再登場
★★★★☆
前作「天使の帰郷」から約3年ぶり、マロリー・シリーズ最新作です。
前4作品に共通していたマロリーの出自の謎については前作で一応の決着があったためか、今回は趣を異にして、問われるのは事件の容疑者と被害者の過去。
ストーリーは第二次世界大戦下のヨーロッパに遡り、自分と拮抗する「怪物」との対決の中で刑事という職分を超えた闘いを余儀なくされるマロリーは、これまでにも増して、捨てたはずの根底的な人間的感情を剥き出しにされていきます。
シリーズとしては異色というか、特殊極まりない主人公を必要としていない話では?と思いながら読み進んでいきましたが、ラストの落とし前のつけ方はやはりマロリーならでは。
シリーズ愛読者は必読、初めて読む人もぜひ。
務台夏子氏の邦訳はいつも通りの good job ですが、一つだけ気になったのはマロリーのセリフ。
「やってない」「ほんとは」等のくだけた口語調が頻出するのは、マロリーのキャラクターとしては違和感を覚えます。
作中にも“英語は彼の母国語ではないため、その言葉遣いは正確で、慣用句もスラングも出てこない。文章は短く、整然としていて、冷ややかだ”という理由で、情報源の一人のメールを楽しみにしていると表現されている主人公なので。