知は喜び
★★★★★
文化系の学生(人文・社会1年生、93年度〜?年)の為の、サブ・テキストとのこと。18人の研究者、教授陣からなる。
おおざっぱに紹介すると、
・フィールドワーク・・・1987年、マリ共和国にて。
この話は、子供の頃 地図が読めなかったことを思い出した。多文化との関係のみならず、自分自身を俯瞰させて見つめる
心の持ち方を示唆する。
・史料・・・歴史を読むとはどういうことか。 読みの視点。
・アンケート・・・質問項目作成の手順。 結果の分析。
・翻訳・・・執筆者は、英語関連の書籍・月間紙などでよく掲載され、翻訳家としての名声も高い 柴田元幸教授。(執筆者紹介欄の写真がお若い)
・比較・・・他者への正しい認識の為に、自分のあるべき心の持ち方。
(社会科を真面目に勉強した学生にとっては珍しくない「絵」かもしれないが、フランス人ビゴー作の 社交界に出入りする日本人を皮肉をこめて描かれたた漫画スケッチは、当時の 両国、近隣諸国の関係と 社会的背景、描いた人とモデルにされた側の育ち方、生活や社会環境による考方、 ふるまい方。さまざまなことを語りかけてくる絵だ。)
・アクチュアリティ・・・事実と報道。1989年の、ベトナム難民が大量に、長崎県などに小型船で漂流したときの出来事。
・プレゼン・レジュメ・ディペートの技術・作法。 資料の集め方。
・結び・・・「うなずき合い」。心当たりがありすぎて、うなずきながら読んでしまった。
初版が1994年4月だが、古いことがマイナス要因になっているのでは という心配は 無用だった。
それは、新しい知識として 上乗せする為の本ではなく、考え方の基盤、土台作りに欠かせない「知」の(必須)栄養素として不変である手引き書だと感じたからだ。
東大の教科書
★★★★★
様々な分野の独特なものの考え方に触れられるオムニバスな本。教科書としてだけでなく読み物としても面白いです。
何か発想力が乏しく感じてきたら一度読んでみては。
大学と学問への向き合い方が分かる!
★★★★☆
この本を読むと大学、学問への向き方が大まかに理解できた。私を含め、日本の大学生の多くが、いかにこの素晴らしき時間を無駄に使っているかが読めばきっと分かるだろう。
各分野の専門家の話を読みながら、ざっくり学問の大まかな概念が理解できるようになる。興味が無かったり、我々にその分野に対する知識が不足していることで多少難解な部分もあるが辛抱強く精読していくと「将門記」から日本人の民族性を読み解く等、知的好奇心を掻き立てられるだろう。
論文の書き方も、多少堅いが心構えから発表まで丁寧に教えてくれている。少しでも多くの日本人がこの本によって学問に意欲的になってくれることを願ってやまない。大学も学問も、もう怖くない!
知のエッセンス
★★★★☆
東大教官の研究エッセンスとものの見方。
本書には、後半に発表の技術的なことが書かれている。
研究という場のエッセンスは、十分味わえ、
研究の入り口を知るにはとてもよい読み物だと思う。
教官ごとに温度差のある文章ではあるが、
大学の初学年には程よい本になっている。
本書を教科書として読む東大生には気の毒だが、
一般の読者には十分楽しめる。
「認識の技術」とは
★★★☆☆
当時話題になった、東京大学教養学部の「基礎演習」で使用されていた(されている?)テキスト。「知」の作法を学ぶための本。
私の読んだ時期が悪いせいかもしれないが(既卒)、各要素の連関性がわからず結論として何を指摘したかったのかがつかめなかった。ものごとには「このような理解の仕方もあるよ」ということを雑多に紹介しているように感じる。
とはいえ、大学1年生にとってはそれでも面白い発見があるのかもしれない。特に本書の中核である第U部では様々な「認識の技術」が紹介されているが、「フィールドワーク」による私たちの常識の打破や、たった数行の文章から本文全体のテーマを読み取る「解釈」は、学問の奥深さを私たちに教えてくれる。
それだけに、第U部の各項目の整合性に編者はもっと気を払ってもらいたかった。例えば、「構造」「比較」「関係」は、明らかに部分的な内容の一致を含んでいるが、これらは包含関係にあるのか、それとも独立したものとして捉えられるのか。また「統計」による分析と「モデル」による分析は並列して良いものか。できうることならば、ここで挙げられた「認識の技術」の実践的な活用方法について、もう一歩踏み込んで欲しい。
「知」の技術・作法を学ぶという姿勢に疑問を感じないわけではない。そこには「知」の矮小化が潜んでいないかという危惧がある。しかし、そのような問題をひとまず脇に置いておけば、大学で学ぶべき『知』とは何かについて知るための手頃な入門書であることは疑いない。「『賞味期限』がせいぜい数年」であると筆者が断っているが、現在でもまだまだ利用価値のある一冊である。(新版が出ているようであるが、評者はまだ読んでいないためコメントは差し控えたい)