多神教としてのキリスト教−−映画『化石』(小林正樹監督)の世界
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ヨーロッパ各地の教会に有る天使の彫刻や壁画、それにステンドグラスを多くの写真で見せながら、ヨーロッパの美術史と、地方文化を語る本である。ヨーロッパ人にとって、天使と言ふ物が、かくも重要な存在であった事を見せられると、キリスト教は、実は、多神教だったのではないかとすら思へて来る。
この本を読んだ人に、小林正樹監督の映画『化石』(1975年)をDVDで見る事をお薦めする。−−パリで自分が癌である事を知った初老の主人公が、その事を自分の胸に秘めながら、親しい人々と、ブルゴーニュの教会を訪れ、自分の人生と死を考えると言ふ美しい、内省的な映画である。−−この本を読んで、私は、『化石』の教会の場面を思ひ出した。
(西岡昌紀・内科医/平成19年の晩秋に)