叙述スタイル的には,同じ出版社の内田貴『民法』シリーズや前田雅英『刑法講義』シリーズと同様の雰囲気で,初学者でも読破できるよう,記述に工夫が凝らしてある.例えば,一つの概念を論じるに当たっては,初めに定義を明確にし議論を誘導することはもちろん,類似概念との比較,比喩のふんだんな駆使など,文章が相当に咀嚼し練ってある.法哲学は割と身近な問題を扱うということもあり,高校レベルの社会科科目程度の知識があれば,本書の理解はそれほど困難ではない.この点は大いに評価できる.ただ,咀嚼した説明を採ることの宿命(?)として全体頁数はそれなりに大部である.比較的余裕のある大学1・2年生の頃に,まとめのノートをとりながら(もちろん,そのノートは将来膨らまして行くことを念頭に)読んでおくといいだろう.
法学部に入学したら内田『民法』などと併せてまず買うべき一冊.法的思考の特徴・枠組を掴むことが出来るだろう.