内容は宗教史のカテゴリーになってきますが、中世においては、寺院が経済や 場合によっては政治の中心であったわけですから、宗教の範囲で、この本を読んでしまうと それはとてももったいないことになってしまいます。
誰かの保証があっての権威あっての先例が あの時代にはいかに大事か またそのためにいかに偽作、偽文書が作られたか?
先行の旧仏教の対立のなかで 聖徳太子という存在を、親鸞が持ち出してきて、いかに新仏教を築いていったのか?そのあたり、教科書ではいまひとつわかりにくいところが、イデオロギーの面で さらっとしながら、触れているのが おもしろかったです。
主に偽書を作る宗教者の視点で、論旨が進みます。偽書(聖徳太子が未来を書いた、という書物など)が生まれ、流通した時代背景、当時の宗教者の考え方、精神世界などが論じられています。中世宗教(鎌倉新仏教あたり)がお好きな方には特におすすめです。