史実の扱い方。どこまでウソは許されるのか。
★★★★☆
現代の殺人事件に関わってくる,幕末から明治にかけて生きた歌川広重の存在。
広重は,東北の仙台伊達,米沢上杉,庄内酒井、会津松平など佐幕の大藩に囲まれた
小藩,天童織田藩に,ただのような値段で,肉筆画を描いて渡していた。
仲介していたのは,天童藩江戸留守居役吉田専左衛門,広重の狂歌仲間である。
天童藩は,その絵を、献上金を差し出した豪農や,商人に与えていた。
当時、各藩はどこも財政の窮乏に苦しんでいたが,天童は特別だった、
老中水野忠邦の天保の改革によって,化粧などの贅沢が禁止され,
天童の特産である口紅の原料,紅花が売れなくなってしまったのである。
そのカネを集めるために,天童藩は広重の絵を50本ほど配った。
しかしそれは,窮乏する財政に当てるためだけだったのか。
実は,天童は勤皇の吉田家が、実権を握る藩だったのである。
しかし,上記の「史実」どこまで史実なのだろうか。
浮世絵ファンも納得の学識
★★★★☆
著者の浮世絵三部作のラスト。技術的に段々上手になっていくのが分かる。広重隠密説が説得力をもって語られてる点が良い。
浮世絵ファンも納得させる学識に感嘆する。ミステリーの方もイイ調子。
哀しい結末に涙
★★★★☆
高橋氏による浮世絵三部作の最終作です。
前2作において中心的な役割を果たした人物の”死”という
悲しい事件で物語の幕は上がります。
本来は武士身分であったという広重の”本職”。
そして天童藩との関わりにおけるその旅の理由、そしてその死の謎。
おなじみ塔馬が鋭く迫ります。
しかしながら、その鮮やかな推理とは対照的な、あまりにもやるせない哀しいラスト。
涙なくしては読めません。