表題作『北斎の罪』は北斎漫画の第13集の別バージョンか?という画帖が舞い込んできて、それが本物か偽物か、という問題から、北斎漫画出版の背景、そして意外な“北斎の罪”までが明らかにされる秀作です。ただ、北斎漫画がどういうものか、ということくらいは(常識?)知っていないとその衝撃は堪能できないかもしれません。
『百物語の殺人』は舞台で百物語を上演するにあたって監修として名前を貸してほしいと友人の知人の元TVマンがやってきますが、上演記念パーティーの舞台裏でその本人が殺されます。アリバイトリックじたいは割合簡単に分かるのですが、そのパーティーに隠された狙いや、鶴屋南北との絡みも合わせて、二重三重のしかけが面白いです。
『竜の伝承』は完全な『竜の柩』のための習作/土台で、やはりこの短編を先に読んでおいたほうがより楽しめるでしょう。本作だけでも40ページの中にかなりの情報が詰まっているのですが、これを10倍パワーアップさせたのが『竜の柩』。
他には伝奇系の『鬼ヶ洞』、エイリアン/UFOものの『鬼追者』、純粋なホラー・ショートストーリー『鏡台』を収録。