海岸線はアメリカの1・5倍ですわ!!
★★★★☆
加藤周一は、日本人はアイデンティティがあり過ぎると言っていたが、本書はもしもニッポン人とは何かと問われたときに、今後有力な根拠となるものを提示したオリジナリティ溢れる思考の産物だと思う。
梅棹忠夫、川勝平太(個人的には川勝の理論は肯んじえないが)に続く、グランドセオリー足りうるのではなかろうか? あと付け加えるなら、鹿島茂の“ドーダ”理論かな。
本書の中身に就いてもあれこれ言いたくはあるが、それを書くと本サイトは乗っけてくれないことが大半なので、読者の皆さん是非本書に当たられたし。
新しい視点からの歴史をただる
★★★★☆
日本の海岸線のもつ歴史的意味を探る、新しい視点から歴史をたどる。
日本人にとって「山」との関わりは多く語られてきたが、「海岸線」
とは切り口がユニーク。
海に囲まれた島国ながら、海岸線の意味、信仰的・農耕的・商業的・
軍事的に見つめてみるとまたこれからの付き合い方が見えてくる。
海岸線から眺めることで見えてくる、新しい歴史解釈の可能性
★★★★★
「中国やアメリカよりも海岸線が長い国」
それが日本であり、そこに文化が生まれないわけがないと言われれば、なるほどそうかと思う。
本書はそんな「海岸線からの視点」で日本史を(時に世界史の視点も交えながら)説いていくもの。
今までなかった新しい歴史観を提示してくれる、とてもスリリングな一冊だ。
「海というものに対する信仰」や「海岸線の変化とその影響」など、本書には興味深い記述が多いが、白眉は何と言っても、江戸期から明治期にかけての「海岸線」に対する意識の変化だと思う。
たとえば、敦賀や酒田、鞆の浦など、江戸期に栄えた港町で、明治以降往年の輝きを失ったところは多い。
その理由は東京への一極集中や鉄道の発達、それによる海上輸送の地位低下などに求められることが多かったが、本書では「港の水深の深さ」を、その理由の一つとして挙げる。
西洋の大型船が入るには、水深の深い港が必要だったのだ。
確かに、横浜や神戸、新潟や函館など、現在でも港湾都市としてにぎわっているのは、水深の深い港だ。
これなどまさに、「海岸線からの視点」がなければ見えてこないものだろう。
書き口も無味乾燥ではなく、清河八郎の日記を縦糸にしたりと、歴史ファンにはたまらない一冊だ。
海岸線から見る日本
★★☆☆☆
本書は海岸の姿の変化から日本社会の古代から現代までの変化を捉えようとしたもの。着眼は言うまでもなくユニークだ。しかし、それはまだ、思いつきの域を脱していない。さまざまな話題が扱われるが、そしてそのいちいちは非常に興味深いのだが、それらが全体としてまとまった主張とはなっていないのである。
勿論、このような<海岸線から見た日本>などという試みに先行者がいない以上、このように評するのは著者にたいしてやや酷かもしれないが、松本健一は大家ゆえあえて厳しい言を贈りたい。