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イスラエル (岩波新書)

価格: ¥840
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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国民国家の暴力性 ★★★★★
イスラエル現代史の本です。

読み終って見ると、彼の国があまりにも暴力的な歴史を持っているなあ、という印象が強く残ります。

著者はシオニズムの研究者で、決してパレスチナ側の立場から書かれているわけではありません。本書ではイスラエル国内での政治、社会史に的を絞っているため、パレスチナ難民が起こしたテロや、周辺アラブ諸国の軍事的脅威についてはあまりふれられていない。そのせいかイスラエルという国家の暴力性が目だって見えます。

しかしこれは国民国家というシステムに普遍的な暴力だといわなければなりません。国民国家は基本的にある人々を「同化」し、またある人々を「廃除」します。このプロセスはどうしても暴力的になる。

日本ではアイヌや沖縄の人々に対してそれが起こりました。けっして他人事ではありません。

本書の「あとがき」に印象的な一節があります。著者がイスラエルに留学していたときのこと。

「それまで私は、ヘブライ語を学んでもシオニズムという反動的な政治イデオロギーには『洗脳』されないぞという構えで語学学習に取り組んでいた。そんなときに私と同世代のヘブライ語教師が行ったことで、イスラエルのハト派のシオニストの人々がどんな考え方を抱いているのかの一端を知ることになった。『われわれの世代(1950年代中頃生まれということだが)にとって、シオニズムという大きな物方を語れる時代はもう終わってしまったのも同然なんだ。ぼくが本当に問題にしたいのは日常生活の中の「何か些細なこと」を通してなんだ』と。」

私は50年代末の生まれですが、このヘブライ語の先生のことばには共感できます。というより、私たちと同じ生活感情を持っていたことを感じます。

私も青春時代には同じ思いを持っていました。戦争は終わり、「戦後」も終わり、日常生活の些細な幸せが人生の関心事となっていました。世界にはいろんな問題が山積みになっていることは知っていましたが、それはそれで成り行きにまかせ、自分は先進国に生まれた幸せを享受すればいいのだと。

こんな日本の50年世代と共通した心性をイスラエルの同世代も持っていたのだと思うと、複雑な気持ちになります。彼らの轍は私たちの轍でもあるからです。

イスラエルほどではありませんが、日本もまたかつてに比べるとはるかに暴力的な国になってしまいました。社会的格差の諸問題を見るたびに、どうしてこんな国にしてしまったのだろうと内心忸怩たる思いがします。
イスラエル入門 ★★★★☆
パレスチナ問題を扱う著作は数多くあるものの、意外と少ないイスラエルの政治史・社会・思想に焦点をあてた著作。
シオニズム・ユダヤ主義・ユダヤ国家の内包する矛盾や限界、イスラエル社会の変容に関する記述は非常に興味深い。
パレスチナ問題を理解する上で是非読んでおきたい一冊である。
イスラエルは誰の物に成るのか? ★★★★★
 イスラエルと言ふ国の複雑さが痛感される本である。誰もが知る通り、イスラエルを建国したのは、ポーランドやロシア出身のシオニスト達であった。しかし、今現在のイスラエルが、パレスチナにこの国を建国した彼らが描いた青写真とは違ふ国に成りつつ事を、この本は、詳細に語って居る。ミズラヒームと呼ばれる中東出身の人々が、イスラエル社会を、東欧出身のシオニスト達の思惑とは別の物にしつつある事が、この本を読むと、痛感させられる。パレスチナ問題について、いかなる立場を取るにせよ、この本は絶対読むべきである。イスラエルは、誰の物に成るのだろうか?

(西岡昌紀・内科医)
中近東を知るために ★★★★★
イスラエルの存在は、ヘブライ語、ユダヤ教、ユダヤ人が鍵とのこと。
ユダヤ人といっても、
アシュケナジーム:ドイツ系ユダヤ人:イディッシュ語
スファラディーム:スペイン系ユダヤ人:ラディーノ語
ミズラヒーム:中東系ユダヤ人
など、いろいろだとのこと。

世界中にいる中国人とユダヤ人。中国人は、すぐに見分けがつくが、
ユダヤ人は各国での分岐が大きいような気もする。

中国人とユダヤ人に共通の特質である世界経済との関係の記述がないのはなぜだろう。
また、食料、音楽、習慣などの生活が見えないのはなぜだろう。
わかりにくかった「イスラエル」のことが多少は見えてくるかも ★★★★☆
第二次大戦後も周辺アラブ諸国との戦争が絶えず、テロとそれに対する報復を繰り返しが日常化しているらしく、やたらと高いフェンスを築いたり・・・、そんなイスラエルって一体どんな国なんだろう、という興味からこの本を手にしました。

筆者はあとがきで、「本書の特徴は、イスラエルが事実上、・・・多文化主義に向かっていることを議論の前提としていることである。逆に言えば、多文化主義的性格のゆえに、イスラエル国民の多くはその反動として、ナショナリズム的な行動をとる傾向にある。」と述べています。

「イスラエル=ユダヤ人国家」ではあまりにも単純化のしすぎのようで、イスラエル国内のユダヤ人は、スファラディーム、アシュケナジーム、ミズラヒーム、ファラーシャ、・・・などとそれぞれの背負っている地理的・歴史的・文化的背景から分類されるらしい。しかも、その文化的差異は序列化されているとのこと。

シオニズムから建国を主導したのは欧米系のアシュケナジームだったが、建国後周辺イスラーム世界と対立を深める中、大量のオリエント系ユダヤ人ミズラヒームが流入したものの、両者の政治経済的「格差」は放置されてきたらしい。

そのような国内矛盾が「ホロコースト」の政治利用や極右政党の躍進に結びついている、というのが本書に描かれている大まかな流れになろうかと思います。