備忘録のようだ
★★★☆☆
あらすじは他の方のレビューに書かれている通りです。
私は去年初めてこの本を読みましたが、今振り返るとこの漫画はストーリーをネガティブな備忘録に用いたようにも見える、と思います。
次第におぼろげになる記憶の中、この漫画の話を辿り直すと、強烈に脳裏にに焼き付いているのは主人公の必死さ。
そして次いでその周りに映るのはなぜか、恋人でも同僚でもなく、藤本さんなのです。あの不気味さが嫌で、できるだけ読むのを避けていたのに。
主人公の甘えを許し肯定する存在は彼だけだったと記憶しています。お金と引き替えに主人公を誘い、床を共にしその度ダイエットを断念するよう働きかける。
怖がりながらも身を任せる主人公は、エステに通いたい気持ちがあるとはいえ、人の甘えに溺れる心の象徴だったのではないでしょうか。
ダイエットや美、幸福という大きなテーマの陰に、何かひっそりと忍ばされた細かなサインを感じます。
辛いときは甘えるのもいいけれど、溺れて見失うのはいけない。主人公と藤本さんの場面から思うのはそのことです。それではもう一人の脇役である女性にも何かメッセージが…?書店で見かける度、ぼんやりとそう考えます。
読むときにはきついですが、後に忘れかけ自分の脳によりソフトに変えられた記憶の隅で、「これはこういうことか」と思わされる。
メインテーマも然ることながら、まるで、ただ個々のテーマを追いかけストーリーや場面の根底にあるものを、頭に焼き付ける為だけの仕様にも見えて、そこが備忘録のようだと、なんとなく思えてきました。
こういった作品は珍しいので少し高めの評価、しかし強烈な描写なため、冷静な気分で読める方は少ないと思うので星三つです。
※あらすじに関して間違いを修正しました
それは新たな人身御供
★★★★☆
OLの「のこ」は、その外見をよくいえば「ふくよか」な、悪く言えば「小太り」
な、引っ込み思案の女の子。上司にいつもできない者扱いされてはなじら
れ、「マユミ」を筆頭とする同僚たちからはいじめとまではいかないが、奇異
の視線を注がれ小バカにされている。彼女はそれでも平気だった。なぜなら
八年も「こんな私とつきあってくれている」恋人の「斉藤君」の存在がありそし
て、現実がつらくても食べれば逃避できたから。しかし、マユミから「いじり」
が手練手管を駆使したいじめに変わったとき、ささやかながらも幸せだった
のこの環境は、徐々に瓦解し始めて…。
本作はタイトルが示すとおり、特に女性の「身体」と「ダイエット」がテーマだ。
ボールペンのような細いペンで描かれる安野のシャープな画は、この文春
文庫版の紙質が白いせいか、さらにエッジの効いたものとなっている。
以前読んだ『経済成長という病』という本の中で著者平川は、「世間にダイ
エットという言葉が流行しはじめたとき、すでに経済成長はその本来の動
機を失いつつあると思うべきではないのか」と述べている。当時は膝を打つ
ほどここに感銘を受けたものだ。ジーパンからはみ出たそのお肉はすでに
「余分」な部分であり、その余分を腹に蓄えるほどには人類は富める必要
ないのだ、と。しかしこのマンガを読むと、「平川さん女にとってはそう簡単
な話でもないみたいっすよ」と言いたくなる。
「見られる性」としての受動性を刻印された女性にとって、身体はすでに社会
にサクリファイされたものなのだ。そのような女性にとって、自分の体は自分
のもののようでいて、実はそうではない。これはおそらく現代社会に生き残る
「人身御供」の一種なのかもしれない。「のこ」の「やせてすてきな女性になり
たい」という本来内発的だった願望は、社会的な視線(斉藤君の件も含む)と
いう燃料投下によって、拍車がかかり、彼女の生命まで危機に瀕することとな
る。
だから男子諸君よ!
「君は君のままでいいよ」という愛のささやきは、女性を過酷な戦いのなかに
落としているのかもしれないのだよ。
誰しも共感できる何かを持ってるはず。
★★★★★
怖ェ
っす。
このマンガ、怖ェっす。
そこらへんのホラーやサスペンスより、
よっぽど、怖い。
のこは“太め”のOL。
会社では、上司に叱られ、
同僚にいじわるされ、
嫌なコトばかり。
でも。
食べてれば大丈夫
食べられれば
なんとかなる
たとえイヤなことが
沢山あっても
そう言って、
大量の食べ物を口に詰め込む。
時には、泣きながら。
つきあって8年になる
イケメンの彼氏がいる。
でも、のこは
冷たくされても、
連絡を絶たれても、
浮気をされても、
彼に対して強く出れない。
太っている自分と
つきあってくれているんだから
なーんて
負い目を感じているから。
そんな彼も、
細くて美人の同僚に奪われ、
仕事のミスの濡れ衣を着せられ、
挙句に、
「あんた見てると
イライラするわ。
デブ!!!」
すべてを失った彼女は、
ダイエットを決心する。
痩せてさえいれば!!
彼も自分の元に戻ってきてくれる
皆を見返してやることができる
ただ、痩せてさえいれば!!
そうして彼女は
過食嘔吐を覚え、
極端に痩せていく。
さるきちは、つい自分の姿を重ねてしまう。
他人の評価が絶対的で、
自己を持たない、のこ。
過食嘔吐に逃げて
現実を見ようとしないのこ。
違う!そうじゃない!!
のこに対して、
エールとも、警告ともいえる言葉が
喉元までこみあげてくる。
そして、胸がぐっと苦しくなる。
嗚呼、さるきちも
同じことをしているじゃないか…
痩せた身体を手に入れたのこは
好きな洋服を買って、
オシャレな髪型にして
彼に会いにいく。
でも、久々に会った元彼は
絶句。
のこを無視するのだった。
あたしは、ここにいない
いるけど、いない
やせなきゃ
もっと、やせなきゃ
嗚呼、のこ、違うよ!!
違うよっ!!
さるきちは叫ぶ。
でも、その声は、もちろん、
のこには届かない。
半年後、
のこはたまたま
エステのお姉さんに出くわす。
以前、痩身コースに
通っていたのだった。
「太るのって、あっという間ですね…」
そう、のこはまた体重が増え
昔に逆戻りしていました。
「やせていたとき、あたし…
あまりいいことなくて。
周りの人も太れ太れってすごくて」
「だから太ったの?
あなたの身体なのよ。あきれるわね」
エステのお姉さんの言葉は、
この作品の総論といえよう。
あの子…
たぶん、繰り返すわね
身体じゃないもの
心がデブなんだもの
そして、のこは今も
脂肪という名の服を着て
生きている。
登場人物は、
どのヒトもココロがどこか歪んでいる。
デブをいじめることでしか
生きてる実感を得られない美人の同僚。
太っていて、弱くて
自分に絶対服従する娘じゃないと
つきあえない彼氏。
どの症状も
他人事とは思えない何か、を
感じることができる。
さるきちも、ココロがデブなのだ。
さるきちのアイデンティティって…?!
臆することなく、
憎悪と美醜の織り成す世界を
見事に描ききった
安野モヨコに感服。
おススメの一冊です。
ゾッとしました
★★★★☆
いろんな意味でゾッとしますが、一番恐怖なのは、太った主人公の裸体のリアルさ!若いのにオッパイが外側に向かって垂れているところとかでろんとしたお腹の肉とか、リアリティがあり過ぎてハッとさせられます。こういう「無様さ」をきちんと描けるところが凄いと思いました。
他の作品のほうが好きかなぁ?
★★☆☆☆
安野さんの漫画には、結構「太ってて、不細工」というキャラが存在しますね。
あと、「美人で意地悪」も(笑)。
内容が面白ければどんなキャラでも良いんですが、
この物語は、全般的にダークで後ろ向きなイメージが残り(主人公自体が後ろ向き)、
ダイエットがどうこうという話でもなさそうだし。。。
最後に何が言いたかったのか良くわかりませんでした(;'▽`A``
もちょっと主人公が、わかりやすく前向きだったりするほうが好きなので、
他の作品のほうが好きですねー。