いもり酒や、一生一交の人、一夜で孕む事、後妻打ち、妻敵討ち、道祖神、伊勢男に筑紫女、等々、「性の民俗誌」として現今でもなお、かなり面白い内容の書物である。著者の語り口の巧みさと性愛の民俗学という中味とが相俟って、誰しも読み始めたらやめられない魅力に充ちた作品だと言えよう。
ただ敢えて難を云うならば、異性間の事象に偏りがちで、男色など同性同士の情愛に就いての言及が乏しいという点が指摘出来るだろう。