神林長平氏によるSF作品。
舞台はまったく無個性な世界。
主人公はその中で違法とされている「名」を持つ少年と少女、そして世界を無個性化しているシステムの一部かもしれない「名」無き知性。
少年少女は過去の遺物である武器を発掘し、その中に記録された「個性体」を使って仮想空間でのゲームに興じるが……
どちらかというとメインの主人公は「名」無き知性のほうで、少年少女たちは彼が「名」を求める踏み台にされている。
「名」とは何か?
「機械」とは何か?
「言語」とは何か?
「個性」とは何か?
「自分」とは何か?
「世界」とは何か?
入り組む無個性な現在とそうでない過去。「名」を求めるあまり過去を現在に侵食させる「名」無き知性。
その果てに彼が見つけた「自分」「名」とは―――?
確かにまとまっているが、ほかの作品にあるような派手な展開はなく、あまり盛り上がることなく終わってしまうのが残念。
ただし神林流の皮肉や展開など、基本は押さえているので一読の価値はある。