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東南アジア 多文明世界の発見 (興亡の世界史)

価格: ¥2,415
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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東南アジア史は自己充実史 ★★★☆☆
 秘かに敬愛する石澤先生が、東南アジアについて書い
たとなると、もう読むしかありません。そして読み始め
て、いきなり東南アジア史は、進化論的な歴史ではなく
自己充実史と喝破しているですから、期待はふくらむば
かりです。
 ところが、この後の碑文資料等からカンボシアのかつ
ての社会生活を説き明かす作業は、他の文字資料が少な
いこともあって、必ずしも快調というわけにはいきませ
ん。それでもここで取り出された、水利・灌漑の整備と
米作の発展、そしてその上に立つ各王朝とそれを権威づ
ける壮大な伽藍という範型は、今後東南アジア史を考え
るにあたって基礎的な視角になるものだと思います。
 僭越を承知で敢えて言わせていただくと、充実史の充
実の中身がどうもはっきりしませんでした。「生きるよ
ろこびが満ち溢れている」(この気持はとても分かるの
ですが)という著者の主観を超えるものを、もう少し書
き加えていってもらいたいと思いました。
碑文史料が綴るアンコール王朝の政治と社会 ★★★★☆
 東南アジアとなっているが、大部分はアンコールワットをはじめとするカンボジア=クメールの話である。インドネシアやマレーのことがあまり書いてない。アンコール地域を長年研究していらっしゃる石澤良昭先生の著書だから無理もないが、ちょっとタイトルに偽り有りと言いたくなった。
 クメールについては、著者自身が発掘にかかわったバティアン=クディの大量の破壊仏像発掘をはじめとして、最新の話も多く充分面白く推薦できる。概してこのシリーズは著者が自分の専門研究を縦横に語ることができるという方針で編集されているらしく、広い範囲を偏りなくくまなく解説するというスタンスではない。そこが従来の世界史全集と違った面白いところだといえる。
此の本の中心は第4章のタイトルでもある「碑文史料が綴る王朝の政治と社会」である。第4章だけでなく、第5,6,7,8まで全てこれが主題であり、人々の食生活まで含めて興味深い記述がなされている。王室の人々の高いインド的教養、王師という世襲祭祀一族の問題など前よりよくわかるようになった。こういう風に内部からみているような書き方なので、写真が少ないこともあるが、遺跡のイメージなどはあまり浮かんでこない。
 アンコールを中心とするクメール文明を、単に王朝史や水利技術など一つの見方ではなく人々の生活も含めて多面的に説明しようとしているところが、好感がもてる。ただ、そのため時間的に前後し錯綜してしまうことがあって、一気に通読しようとすると少し読みにくい本になっているように感じた。
 また、10,11章に17世紀以来の宣教師や欧州との接触、日本人のアンコールワット参詣の話があり、これは従来の日本語出版の本より詳しいと思った。
ただ、第12章「東南アジアからのメッセージ」に、ポルポトのことがなかったのは不審に思った。
東南アジアから学ぶもの ★★★★★
 アンコール・ワット研究の第一人者が東南アジア世界に我々をいざなう一冊。
 東南アジアというのは広大で自然環境もバラエティに富み、言語系統も大きく異なる。他の地域に軍事的に出て行ったこともなく、中国やインドのインパクトが強く、なかなかその独自性が見出しにくいのは事実である。
 しかし、石澤氏の地道な調査、研究により、アンコール朝を中心に、東南アジアの人々の歴史が鮮やかに紙上に繰り広げられる。古代文明の成立から、中国・インド、イスラーム文明の導入、海洋国家の興隆、そしてヨーロッパによる支配、独立、近年の発展までオーソドックスな流れはおさえてある。
 また一番の見どころは、石澤氏の直接の経験に基づく東南アジアと日本のつながりである。残留日本兵や、アンコールワットに墨書を残した日本人のその後など、興味をそそる事例が盛り込まれている。
 東南アジア研究には様々な意味で課題が多いが、それは世界史・歴史研究の方法や、我々日本人の東南アジアへのまなざしが問われているということであろう。