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花のれん (新潮文庫)

価格: ¥578
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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大阪船場の美しさ ★★★★★
山崎豊子さんと言えば長編小説を得意とする作家ですが、本書は珍しく1冊で完結しています。しかし内容は非常に濃く読み応えがあります。本書は吉本興業の吉本せいさんがモデルと言われていますが、吉本せいを描いたものではありません。寄席を経営したり、通天閣を所有したりするところからそのように連想されるのでしょうが、全くのフィクションだと思います。本書の主人公である多可は苦労して寄席の「花菱亭」を独自のアイデアとお客を大切にする気持ちとで大きくしていきます。多可は経営には箱モノ(ハード)も大切だが、その箱モノを活かすアイデアやお客を大切にする精神(ソフト)が大切であることを実践して見せます。そして生きた金の使い方を教えてくれます。まさに経営者のバイブル的本です。そんな生臭い経営の世界を大阪船場のはんなりした船場言葉で包み込んでいきます。そのため厳しい経営の世界を描いているにもかかわらず、美しい着物を着た船場のお嬢様の「こいさん、きあんちゃん」の世界を想像させます。本書で私は一気に山崎豊子のファンになりました。
親切さのレベルが高い! ★★★★★
人ってそうされたら一肌ぬぎたくなる。
そうしてくれたら嬉しい。
そう言われたら受け取っちゃう。
そう言われたら飲んじゃう。

たとえば次のような場面。
師匠の供養で女主人の多加が自ら酌をしているのを見た慰問者が
「御寮人さんにそないしていただいては」と尻込みするのに対し多加は
「阿呆かいな、今晩は無礼講で飲むのが、仏はんへのええ供養や、
さ、たんと飲んでおくなはれや」
自分だったら、「いいえ、お気遣いなく。召し上がって下さい」としか言えず、
なんだかんだで相手を恐縮させてしまうと思います。

そんな、恐縮せずに人が嬉しくなるような気遣い。
また耳の痛いことでも嫌な気分が尾をひかない言い回し。
なんてレベルの高い親切なんだろう。

自分ははじめて山崎豊子さんの書き物を読んだのですが、
確かにこんな風にして人と人のつながりができ、続き、深まるなぁと共感でき、
他の作品も読みたくなりました。
社会という人と人の間で生きるには自然な風に事を運ぶのが必要で、
そのためにみんな水面下で努力しているんだなと、
周りの人へあらためて敬意をもつようになった、自分にとってはそんな作品でした。
感激屋 ★★★★★
山崎豊子さんがベストセラー作家あることが、この小説を読んで当然だと納得させられました。
主人公の多加が、商売の才覚発揮して活躍する姿に、時間の過ぎるのも忘れて読みふけりました。

土壇場では、男性より母である女性の方が度胸も据わっているし、生活力がありますね。
船場商人の作法と美学。 ★★★★★
吉本興業の創業者、吉本せいさんをモデルにした作品であることは周知のことと思われます。ただし、二代目の林庄之助さんは登場しません。吉本興業の経歴をなぞったものではなく、大阪船場の商人の結晶として花菱亭の多加を描いたのではないかと思いました。ぐうたら亭主を支えながら、次第に商売を覚え、船場の商人として成長して行く多加さんの姿は、本当に感動的です。大阪という土地は、人を惹きつけてやまないものがあります。阪神タイガースへの贔屓を見るまでもなく地元への愛着もとても深いです。その理由がようやくわかったような気がします。大阪と言った場合、御堂筋、船場、北浜界隈を指しているでしょう。江戸期に豪商を配し、独特の商人文化がなった町への憧憬は今もって営々と脈打っています。この作品でも、船場の作法が随所に伺われてとても興味深く、大阪弁の魅力も味わうことができました。お客さんを喜ばすことを家業にしている吉本興業が、船場の伝統を受け継ぐ企業であることを改めて知ることができました。船場の喧騒が聞こえてくるような味わいの深い作品でした。
やはり山崎豊子さん ★★★★★
※このレビューはあくまで「読まれる前の方」へのレビューです。

山崎豊子さんの作品にしては1冊モノなので「次の長編モノを読むまえの間にでも・・」と軽く読み始めたら話の濃厚さに見事にハマリました。まさに山崎さんの真骨頂!
読み始めはやはり古い時代(明治)からの出だしなので言い回がちょっと難しいな・・と思いますが、読んでいくほどに見事な内容で大満足。
「波瀾万丈な人生」を書かせたら山崎豊子さんの右に出る人はまずいないでしょうね。しかもこの作品で当時直木賞をとっていたとは。

いつか「朝ドラ」かなにかで松坂慶子さんの主演で是非おねがいしたいような見事な一冊。

「ぼんち」や「しぶちん」も是非読みたいです!!