インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

宗教学の名著30 (ちくま新書)

価格: ¥861
カテゴリ: 新書
ブランド: 筑摩書房
Amazon.co.jpで確認
名著で追う宗教学史入門 ★★★★★
歴史学に比べると宗教学というのは歴史が浅い。そのため、後世から見て「あの著作は神学のものだけど、宗教学的要素もある」という当てはめは可能だけれど、宗教学として書かれたものとなると19世紀以降にしか存在しない。そのため、やはり30冊中26冊が19世紀以降に書かれたものである。確かに神学の著作をずらずらと並べられても困るので、この選択は正しかったと思われる。

歴史学30と違い、紙面の多くがその著作や著者の説明に割かれている。そもそも歴史学30がこのシリーズでは特異な体裁になってはいるのだが、メジャーな人物が少なく、どうしても説明せざるをえないという事情も本書にはあるだろう。褒め称えるだけではなく、著作の欠点を挙げ、特に神学的な独善的要素が存在しないかどうかについてもコメントしているため、個人的には親切に感じたし読み応えがあった。たとえば『三教指帰』が一番手として登場するのも、そういった意識の現われであろう。シュライアーマッハーには「諸宗教に共通なコアなどあるだろうか」と切って捨て、ジェイムズには「宗教は個人のものという前提で始めたのに、宗教にとって否定的な部分は宗教的なものではない、という結論を導いてしまっている」と厳しく批判している。

宗教史学の大まかな流れも把握できるようになっており、ヒュームに始まってカント、ニーチェ、フレイザー、フロイト、デュルケム、ジェイムズ、エリアーデ、ヤスパース、バタイユ、ジラール、そしてバフチンで締めている。それ以外にも日本人から数人と、やや周辺的な人物の何人かを収録し、宗教学の多面的な様相がわかるような選書もなされている。これ自体が名著である。


個人的には、やはりシュライアーマッハーとエリアーデ、バタイユが取り上げられていたのが嬉しかった。シュライアーマッハーは宗教普遍の本質を探ったと同時にプロテスタント的な神秘主義を理論付けた偉大な思想家である。日本では大変にマイナーなのが残念である。エリアーデとバタイユは大学に入りたての頃に読み漁り、私にかなり大きな影響を与えた。宗教観という点ではエリアーデ、哲学思想的人生観という点ではバタイユに負うところが大きい。
「近代合理主義」と宗教の「非合理性」 ★★★★☆
宗教を色々な視点(社会学的、歴史学的、心理学的など)で分析した本が紹介してあり面白いです。宗教が因習であり迷信ならば、何千年も人間を惹きつけ魅了するはずはないと思うので、宗教を研究することは大切なことだと思います。

個人的には心理学的なアプローチが面白かったです。近代合理主義社会では自分の意識を自分の外側に出し、それにより自分を自分自身で監視して(規律と訓練)、客観的、合理的な判断をすると言われていますが(それにより疎外感を感じる)、宗教の宗教儀式、宗教体験は自分の意識を自分の内側に戻し、聖なるものに没頭することにより(主観的、非合理的な状態)、逆に他者や世界と一体感を感じることができるという分析です。

我々は打算的(合理的)な生き方をなぜ憎むのか。殉教(宗教的な死だけでなく、戦争や革命による死)、恋愛(「ロミオとジュリエット」などの悲劇的恋愛)、冒険(自分探しなどを含む)などの非合理的な行為になぜ惹きつけられるのか(犠牲の伴わない栄光は存在しない)、ということを考えれば、宗教が何千年も人間を惹きつけ今も存在している理由がなんとなく分かるような気がします。
宗教学入門 ★★★★★
 宗教学というのは、個別の宗教ごとの神学をこえて、人類がなぜ宗教を必要とし、宗教の意味を考える学問であるという。現代の世界が抱える問題の多くが宗教に由来し、そもそも多くの日本人が宗教的原理が世界の多くで有効であることに無頓着であることを思えば、多くの実りを期待される学問分野であるといえよう。
 しかしながら、伝統的な学問分野の多くにまたがり、また個別宗教に対する深い知識と理解、そして客観的で公平な視野が必要である。著者の島薗氏は、その目的を達するための一歩として、必要な30冊を挙げる。これだけでも相当な労力がかかったことであろう。
 よく知られた「正統派」から、「これって宗教学なの?」というもの、「こんな本があったの」いうものまでバラエティに富んでいるが、全体としてバランスのとれたものなのだろう。それぞれも、単なる紹介にとどまらず、当時における意義、今日の課題、著者の姿勢や考えがちりばめられ、知的緊張感に満ちたものだ。
 まずは本書で広い視野を得て、それぞれの原著にあたり、より確かな思索を深めていくべきだ。 
これから学ぼうとする人のための最適ブックガイド。 ★★★★★
空海やエリアーデ等、古今東西の30人の宗教に関する名著30冊についてのブックガイド。

一冊につき10ページ弱ぐらいの解説。
また、その短い解説の中でも著者の息づかいを伝えるためにと引用文が多用されている。

やはり一冊一冊についてもう少し掘り下げて欲しいなあとは思ってしまうが、新書という形式上やはり仕方ないのかなと思う。
それでも、読者が30冊の名著を読みたくなるキッカケとなるに十分な面白さを備えていることは素晴らしい。

宗教学をこれから学ぼうと思っている人で何から読めばいいか迷っている人は、とりあえず本書で30冊に絞ってもらうと良いだろう。
宗教学の若さとは ★★★★★
宗教学は、いまだ発展途上のまだ若い学問分野であると、著者は言う。

とは言え、神学などと袂を分かって近代とともに成立したのが宗教学であるとすれば、成立からもうそれなりの年月を経過してきているわけである。にもかかわらずいまだ発展途上であるとすれば、「宗教学が成熟して老成する(?)日なんてホントに来るのか?」とやや意地悪いことを考えなくもない。

しかし、もう少し踏み込んで考えてみれば、宗教学がいまだ発展途上であることに理由が見出せないわけではない。宗教学が研究対象とする(はずの)「宗教」なるものが何であるのか、我々はいまだ把握しきってはいないのだ。手法や理論以前に、研究対象自体が議論の対象であり続けているとすれば、その学問が若いままであることに合点がいく、かも知れない。

ともあれ、そうしたいまだ得体の知れない「宗教」なるものを手がかりにして何かを考えたいと思っているのであれば、この本はそれなりに役に立つだろう。ここに収録されているのは、「宗教」に関わって何事かを考えた先達の名著とされている書であり、そこに丁寧に解説を加えているのは、日本宗教学界の泰斗たる島薗進である。この本を暗記したところで大して役には立たないだろうが、「宗教」に関わる何かを考えるきっかけ・手引き書としての可能性は、大いに有している。