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歴史学の名著30 (ちくま新書)

価格: ¥819
カテゴリ: 新書
ブランド: 筑摩書房
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『現代歴史学の名著』と比較して 歴史学を学ぶ人のために(7) ★★★★☆
 他のレヴュアーの方々が書かれているように、本書は著者によって選定された「歴史書」30冊の内容を簡潔に述べた、「歴史学入門」である。このようなコンセプトの本は、過去にもある。それが、樺山紘一『現代歴史学の名著』(中公新書、1989年)である。紹介する本書においても、『現代歴史学の名著』についての記述がみられ、独自の視点で「歴史学入門」を描いている。そこで、今回は両者を比較した上で、本書の特徴を述べたい。
 
 まず、『現代歴史学の名著』では、20世紀にヨーロッパで出された書物に限定しているのに対して、本書は古代から現代までの、かつヨーロッパに限らず日本、中国やイスラームなどの歴史家が書いた「歴史書」も含めている点である。例えば、後者においては、著者の専門分野のイスラームからイブン・ハルドゥーンとイブン・アッティクタカーが、日本から新井白石や伊達千広などが紹介されているのである。

 次に、前者は複数の執筆者たちが書いたものであるが、後者は1人で書いたものである。それゆえ、「第1に、著者とその作品がすでに世界史や日本史の上で「歴史的な人物」や「歴史的な書物」になっていることを重視している」(本書17頁)こと、「第2に、「歴史学の名著」にふさわしい書物として、あえて一般歴史学の作品を優先した」(18頁)こと、そして「第3に、歴史性においてすぐれているが、イデオロギーや政治社会を分析し政策の批判・提言や道徳の涵養を重視した書物も概してとりあげなかった」(19頁)ことといった、著者による3つの選定の基準による「歴史学入門」になっている。これが、本書の重要な特徴であると私は考える。

 この2つの「歴史学入門」を読むことで、歴史への興味・関心が芽生えるきっかけになると思われる。
何か尻切れトンボで消化不良 ★★★☆☆
『歴史』には2つの種類がある。HistorieとGeschichiteである。前者は“歴史事実”、後者は“歴史叙述”とそれぞれに呼ばれる。本書はこの『歴史叙述』のあり方を3つの視点と古今東西の史書から紹介した“異色の史学史”である。著者が採り上げた素材(史書)には選択基準としての異論もある(個人的には、トインビーや石原完爾を採り上げるのはどうかと思う。又1つの事実を扱う上で少なくとも2つ以上の史書・史料にあたることは学問以前である。そのため著者の選択方法はかなり乱暴な議論であるともいえる)。その上で著者は『歴史叙述』に対する3つのポイントを挙げる。
1(事実を)どう見るか
2(見た事実を)どう書くか
3(時代と向き合う中で)どう伝えるか
である。
本書の中で気になった点は現代の歴史家として“ウォーラーステインやサイード”を選ばなかった理由に『モデリング』にとらわれすぎるとの点を挙げるが、著者は同書のなかでそのモデリングを知らぬ間に行っている点である。多かれ少なかれ歴史叙述はモデリングを行わざるを得ない運命を背負う。それは歴史叙述を行う時に記述者は何らかの価値に基づいて行わざるを得ないからである。とはいえ、著者が本書の中で採り上げたのはタイトルにある30プラス2冊ではない。他にも紙幅がないと断った上で何冊もの史書や歴史学者の名前を挙げていることは評価に値できる。
それらを踏まえた上で、著者に問いたいことは“では歴史学者として貴方が現代の世界に問いかけたい、或いは問いかけるべき最大のテーマは何か”という問題である。自らが告白しているように、同時代と向き合うことが歴史家の使命であるならば、締めくくりの言葉としてこの一言が必要だったのではないのだろうか。それでも下手なビジネス書をつまみ食いのような形で読むよりは『人生の引き出し』を増やす手掛かりとなることだけは確かである。
歴史そのものより背景に注目したい ★★★★☆
伝説から歴史に移り変わる部分についての名著である。歴史そのものというよりも、歴史学がどのように変遷したのかを代表したかのような、歴史がどのような世相を背景にしているのかを明らかにした本である。
歴史学者が勧める名著30冊ということになっているが、若干微妙なものもある。たとえば石原莞爾の「最終戦争論」は歴史という範疇に入れていいのかという疑問である。この疑問は著者も承知の上で入れている。過去の状態から将来を予測するという意味では歴史といえるかもしれないが、歴史(学)とするのであれば近現代に書かれたものの割にはかなり問題のあるものである。
古典への手引き ★★★★☆
本書で採り上げられた30冊は以下の通りです。

『歴史』ヘロドトス
『戦史』トゥキディデス
『史記』司馬遷
『漢書』班固
『日本中世史』原勝郎
『ローマ帝国衰亡史』ギボン
『日本外史』頼山陽
『イタリア・ルネサンスの文化』ブルクハルト
『中世の秋』ホイジンガ
『地中海』ブローデル
『愚管抄』慈円
『神皇正統記』北畠親房
『読史余論』新井白石
『大勢三転考』伊達千広
『世界史の流れ』ランケ
『東洋文化史』内藤湖南
『春秋左氏伝』(作者不明)
『史通』劉知幾
『アルファフリー』イブン・アッティクタカー
『歴史序説』イブン・ハルドゥーン
『歴史の研究』トインビー
『ガリア戦記』カエサル
『ヴェトナム亡国史 他』 潘佩珠(ファン・ポイチャウ)
『ロシア革命史』トロツキー
『第二次世界大戦』チャーチル
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』ヴェーバー
『科挙』宮崎市定
『父と子』バーリン
『監獄の誕生』フーコー
『無縁・公界・楽』網野義彦

その他に、付録として以下の2冊が加わっており、実質、紹介されている歴史書は32冊となります。

付録1:『知恵の七柱』ロレンス
付録2:『最終戦争論』石原莞爾
歴史から現在と未来を洞察したい大人の書 ★★★★☆
30の歴史の名著が紹介されていますが、お手軽な要約本と思って買うと失望します。学生さんのレポート書き用のお手軽な内容ではなく、筆者のかなり個人的見解を含めて、名著を材料として、歴史と向き合うということ重要さとその本の今日的な意義の解説に重きが置かれています。 その気持ちで読まれれば間違いなく好著です。 ただ、難を言えば、中国と西洋、特にヨーロッパの本に傾斜しており、インドのネール首相の「父が子に語る世界史」などが入っていないのはどうなのでしょうか?石原完爾の最終戦総論が言及されていたり、かなり著者の主観が入っていることにも留意して読みすすめる必要があると思いますが、世界の名著を絞り込むのですから誰がやっても文句は出るはず。この本の価値を低めるものではありません。社会人の夏休みの緑陰読書にお薦めします。