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新・現代歴史学の名著―普遍から多様へ (中公新書)

価格: ¥861
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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良くも悪しくも樺山紘一 ★★★☆☆
 新書という形式はこういうブックガイドには最適であるし、20年ぶりの続編というのも義理堅いことで結構だ。しかし、選書と執筆者の選定には疑問が残る。クールズやコッカの本は取り上げるほどの名著ではないと思う。翻訳者が解説を書くというのも本当によかったのか。当の本とその周辺に通暁しているとは限らない人が訳すことが、とりわけこの国では多いからだ。
 たとえばブラウン『アウグスティヌス伝』、カントーロヴィチ『王の二つの身体』、ウォーカー『古代神学』、エヴァンズ『魔術の帝国』といったところをあえて入れるセンスこそ、編者樺山紘一の本領だったのでは。ル・ゴフなら『もうひとつの中世のために』ではなく、『聖王ルイ』を、また、樺山自身の『ゴシック世界の思想像』を収録してもよかったのでは(解説は池上俊一)。いまや遠慮のいらぬご身分なのだから、少しばかりの毒や遊びがあって悪いはずがない。
 ともあれ、真面目に作られた本であることは確か。現今の新書の世界では掃き溜めの鶴のようだ、と言えば褒めすぎになるだろうか。
歴史学を学ぶ人のために(5) ★★★★★
 最近『〜の名著』といった、その分野における多くの「有名な」研究書について解説した本が目につくようになった。本書は、1989年に同著者・同出版社から刊行された『現代歴史学の名著』の続編である。

 このようなガイドブックを利用することで、3つの有用性があると考える。1つは、ある本を読んでわからなかった時に、その内容の理解を助ける「参考書」として利用することができること。2つ目は、筆者・編者がどのような本を選択しているのかを知ることができること。それによって、ある程度彼らの嗜好がわかる。そして、いままで自分の知らなかった、手に取ったことのない本との「出会い」がもたらされることである。

 特に3つ目に関しては、本書を読んだことで、C.ギンズブルグ、杉山光信訳『新装版チーズとうじ虫−16世紀の一粉挽屋の世界像』(みすず書房、2003年)という本と出会った。今では楽しくそれを読んでおり、私にとっては大きな発見となった。
読んで損はない一冊。 ★★★★★
本書は現代の歴史学における名著を、紹介している本である。
名著の著者の学統に近い一流の研究者が、名著の研究上の意義や評価、学問上の評価もされている点が面白かった。

本書で紹介されている名著は以下のとおりである。
ニーダム『中国の科学と文明』
梅棹忠夫『文明の生態史観』
ゲイ『ワイマール文化』
ウォーラステイン『近代世界システム』
ル・ロワ・ラデュリ『モンタイユー』
ギンズブルグ『チーズとうじ虫』
ル・ゴフ『もうひとつの中世のために』
サイード『オリエンタリズム』
網野善彦『無縁・公界・楽』『日本中世の非農業民と天皇』
アンダーソン『定本 想像の共同体』
ブリッグス『イングランド社会史』
ノラ編『記憶の場』
クールズ『ファロスの王国』
オブライエン『帝国主義と工業化 1415〜1974』
コッカ『歴史と啓蒙』
メドヴェージェフ『1917年のロシア革命』
ダワー『敗北を抱きしめて』
速水融編著『近代以降期の人口と歴史』『近代以降期の家族と歴史』

殆どは面白く、未読の本は読んでみたくなる出来だった。しかし、最初の『中国の科学と文明』の章は、執筆者のニーダムとの思い出や、ニーダムの経歴に紙幅を割きすぎていて、面白くなかった。
最初に面白くない章が来るので、そこで読むモチベーションが下がりかねない。
しかし、最初の章以外は面白いので、『中国の科学と文明』を後に回すか、読みとばすのをお勧めする。
こうした本はありがたいです。一気に情報を得ることができるし、読みたい本も出てくる。 ★★★★★
 1989年という決定的な年に出た『現代歴史学の名著』の続編。同じ樺山紘一(編)なんですが、新旧で取り上げられている本を比較すると感慨深いものがあります。旧『現代歴史学の名著』は、やはりどこかで冷戦を引きずっているというか、ヨーロッパ中心のイデオロギッシュな雰囲気を漂わせる本が多いのに対し、『新・現代歴史学の名著』は対象がグローバルになると同時に、見る目がフラットになっている感じがします。あるいは樺山さんが「はじめに」で書いているように《人類社会の到達目標は、もはや近代化ではなくなり、そのほかの形象に代置されつつある》ということを表しているのかもしれません。
 
 新旧を並べてみると、アナール派といいますか、フランス史学が大きな地位を占めるようになってきたんだな、と思います。考えてみれば、藤原書店の『地中海』の一巻目が出たのは1991年ですもんね。『新・現代歴史学の名著』でも、ル・ロワ・ラデュリの『モンタイユー』を紹介している渡邊昌美さんが書いているのですが、戦後においても日本の《大学や図書館にフランス中世史の基本図書がほとんど蓄積されて》おらず《戦後、この分野への挑戦者が直面したのは、まず図書探しであった》(p.68)という状態だったそうですから。
 
 いまから20年後には、もっと、中国やインド、アラブ、アフリカの歴史なども整理されるでしょうし、そうなった場合、もっと人類社会を透徹した目で見ることができるような気がして、楽しみで仕方ありません。 

 とにかく『イングランド社会史』、『定本 想像の共同体』、『帝国主義と工業化 1415〜1974 イギリスとヨーロッパからの視点』、『1917年のロシア革命』の四冊はさっそく注文しました。
ガイドブック ★★★★★
編著者たちが、現在の歴史学の問題意識を体現する代表的著作として精選した著作を紹介する本。
選ばれた著作は、次のとおり。

ジョゼフ・ニーダム「中国の科学と文明」
梅棹忠夫「文明の生態史観」
ピーター・ゲイ「ワイマール文化」
イマニュエル・ウォーラーステイン「近代世界システム」
エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリ「モンタイユー」
カルロ・ギンズブルグ「チーズとうじ虫」
ジャック・ル・ゴフ「もうひとつの中世のために―西洋における時間、労働、そして文化」
エドワード・サイード「オリエンタリズム」
網野善彦「無縁・公界・楽」
    「日本中世の非農業民と天皇」
ベネディクト・アンダーソン「定本 想像の共同体」
エイザ・ブリッグス「イングランド社会史」
ピエール・ノラ「記憶の場」
エヴァ・クールズ「ファロスの王国―古代ギリシアの性の政治学―」
パトリック・オブライエン「帝国主義と工業化 1415〜1974 ―イギリスとヨーロッパからの視点」
ユルゲン・コッカ「歴史と啓蒙」
ロイ・アレクサンドロヴィチ・メドヴェージェフ「1917年のロシア革命」
ジョン・W・ダワー「敗北を抱きしめて―第二次大戦後の日本人」
速水融「近代移行期の人口と歴史」
   「近代移行期の家族と歴史」

以上、20の著作の選定を通して、現代における歴史学とは何かが透けて見えてくる。
これは読んでおいて損はない本だと思う。