知られざるプロの颯爽たる活躍
★★★★☆
ディック・フランシスの競馬シリーズの1983年の第22作。主人公は誘拐対策コンサルタント。競馬関係者が連続して誘拐される3つの事件での、颯爽たる活躍を描く。
被害者の家族は、身代金はいくら払ってもよいと思い詰めるが、実際に家計が立ち行かなくなるほど払ってしまうと、後に家庭崩壊につながりかねないので、犯人と交渉してできるだけ身代金は値切る…等々、知られざるプロの仕事ぶりが興味深い。
約450ページと長めだが、いつもながら読みやすい文体で、話がテンポ良く進むので、長さを感じさせない。内容もおもしろく、充分に楽しめたが、初期の話とはだいぶ雰囲気が違う。もう「本命」や「度胸」のフランシスではなくなったのだな、と一抹の寂しさを覚えたのも事実である。