気に入った小説を読むと、作家についてもっと知りたくなるのと同じことだと思うのだが、そうした情報はこれまでほとんどなかった。「フラーニャと私」の中で、初めて彼自身によって、彼の実像が 多少はあかされたのではあるが。この小型漫画本を読んで、彼の人となり、スタジオの雰囲気がおぼろげながらわかったような気がする。
ノルシュテインに、モーツアルトばりの即興、湧き出るアイデアといわしめた作者で、彼の弟子である、ターニャの人柄も想像できそうなほのぼのとしたタッチだ。日本人には全く違和感なくわかる。
ロシア人の感性は、意外に日本人の感性と近そうだ。新訳チェブラーシュカの美しい挿絵は彼女の手によるものだ。
作者は確か今冬来日したので、次は「ノルシュテインとの日本珍道中」ができるのではなかろうか?
日本語に加え、英語、ロシア語まで入っているのは、本格的海外輸出の為だろうか?決して目障りにはならないが、大変な手間のかけかたにびっくりした。そういえば台湾の書店では、日本語雑誌がそのまま売られていたりする。本書が海外の書店にならぶことを想像するのも愉快だ。大手銀行を始めとして、日の丸を背負って偉そうにしていた大企業が続々沈没してゆく中、せめて自主独立のアニメくらいはがんばって欲しいものである。