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雲雀 (文春文庫)

価格: ¥600
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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今更言うまでも無いと信じるのだけど・・・ ★★★★★

私なんぞがいちいち言うまでも無いことと心から信じるのだけれど、間違いなくこの小説は、天下無双の傑作です。

プロットが恐ろしく精緻で、登場人物の何気ない台詞やふとした振る舞いが色々な複線や仕掛けとして機能していて、それを読み解くこと自体が楽しいというのは佐藤亜紀の小説を読んでいれば毎度味わう快感だが、そのうえこの小説では佐藤氏が得意とするスタイリッシュで硬質な文体が、作品の扱う超能力の描写と実に見事にマッチしていて、思わず同じ一文を繰り返し読み直したくなるくらいにとにかくもうかっこいいのである。こんなかっこいい文章を母語で読めて、日本語のネイティブで本当に良かったと心から思うくらいにかっこいい。

登場人物たちも魅力的で、初登場のオットー、カールのメニッヒ兄弟はとにかく愉快で楽しいし、ディートリヒシュタインとクレムニッツは相変わらず弱っちくて小物っぷりが実に良いし、再会するヨヴァンはカッコよくなってるし、(何故か『天使』で一番好きなキャラだったかもしれない)ライタ男爵と(やっぱり大好きな)スタイニッツ顧問官の若かりし日も伺えるし、大公とマレクの没落ぶりにはただただ静かな哀愁が満ちているしで誰一人として魅力のない人がいない。嫌な奴はもう嬉しいくらいに嫌な奴だし、かっこいい奴もかっこ悪い奴も、みんなが主役級に輝いている。

登場人物たちが動き回る個々の背景・場面の組み立てもとにかく素晴らしい。塹壕戦の様子は臨場感が抜群だし、グレゴールがラッケンバッハー氏の家を訪問するシーンはどこか滑稽で笑えてそれでいて十分に鬼気迫る修羅場の雰囲気を出しているし、傷ついたジェルジュが訪ねる女達の家は幻想的でまさにファンタジーだし、没落後の大公の屋敷の寂寥感は凄まじいし、クライマックスのカーチェイスはひたすら爽快だし、最後にオットーとカールが現れたホテルの一室は白く輝くベッドのシーツの鮮やかさが目に浮かぶようだし、沢山の鮮やかな場面が次から次へと切れ目無く展開し、ページを捲りながら、まるで贅沢な旅行を楽しんだような気分を味わえる。

作品の語り口のテンポも実に絶妙で心地よく、とりわけラストの中篇「雲雀」のクライマックスへの盛り上がりは凄まじい。名手佐藤亜紀の、見事なストーリー・テリングの真骨頂を味わえる。場面と場面、台詞と台詞がこれでもかというくらいに軽快に繋がっていき、ゆっくりと動き出した物語が最後には怒涛の如き奔流となって突き抜けていく。物語のスピードに引っ張られるようにぐいぐいとページを追って、遂に最後のページを捲りながら、物語のテンションが最高潮を迎えたその瞬間に、呆気にとられてしまうほどに唐突でストレートなハッピーエンドを見せられて、読み終えてしばし呆然としながら、ジェルジュが終に手に入れたささやかな幸せを我が事のように一緒に噛締めている自分に気がついた。

初めて読み終えた時は、自分がただひたすらに感動してしまい動けないのだと気づかないくらいに、深く強く打ちのめされて呆然としていた。それから何年かが過ぎ、『雲雀』を3度4度と読み返してきたが、この感動が色あせることは決してなく、読み返すたびに輝きを増しているようにさえ思われた。
生涯で一冊を選べと言われた結局『天使』と『雲雀』を選ぶのではないだろうか。こんな小説はほかにない。
そしてそう断言できる人は、きっと私のほかにも沢山いるのだと思う。
一人でも多くの読者と出会って欲しい一冊である。

くどいようだけど、本当に、ただただもうこれは空前絶後の傑作なのです。
今更言うまでも無いと信じるのだけど・・・ ★★★★★
私なんぞがいちいち言うまでも無いことと心から信じるのだけれど、間違いなくこの小説は、天下無双の傑作です。

プロットが恐ろしく精緻で、登場人物の何気ない台詞やふとした振る舞いが色々な複線や仕掛けとして機能していて、それを読み解くこと自体が楽しいというのは佐藤亜紀の小説を読んでいれば毎度味わう快感だが、そのうえこの小説では佐藤氏が得意とするスタイリッシュで硬質な文体が、作品の扱う超能力の描写と実に見事にマッチしていて、思わず同じ一文を繰り返し読み直したくなるくらいにとにかくもうかっこいいのである。こんなかっこいい文章を母語で読めて、日本語のネイティブで本当に良かったと心から思うくらいにかっこいい。

登場人物たちも魅力的で、初登場のオットー、カールのメニッヒ兄弟はとにかく愉快で楽しいし、ディートリヒシュタインとクレムニッツは相変わらず弱っちくて小物っぷりが実に良いし、再会するヨヴァンはカッコよくなってるし、(何故か『天使』で一番好きなキャラだったかもしれない)ライタ男爵と(やっぱり大好きな)スタイニッツ顧問官の若かりし日も伺えるし、大公とマレクの没落ぶりにはただただ静かな哀愁が満ちているしで誰一人として魅力のない人がいない。嫌な奴はもう嬉しいくらいに嫌な奴だし、かっこいい奴もかっこ悪い奴も、みんなが主役級に輝いている。

登場人物たちが動き回る個々の背景・場面の組み立てもとにかく素晴らしい。塹壕戦の様子は臨場感が抜群だし、グレゴールがラッケンバッハー氏の家を訪問するシーンはどこか滑稽で笑えてそれでいて十分に鬼気迫る修羅場の雰囲気を出しているし、傷ついたジェルジュが訪ねる女達の家は幻想的でまさにファンタジーだし、没落後の大公の屋敷の寂寥感は凄まじいし、クライマックスのカーチェイスはひたすら爽快だし、最後にオットーとカールが現れたホテルの一室は白く輝くベッドのシーツの鮮やかさが目に浮かぶようだし、沢山の鮮やかな場面が次から次へと切れ目無く展開し、ページを捲りながら、まるで贅沢な旅行を楽しんだような気分を味わえる。

作品の語り口のテンポも実に絶妙で心地よく、とりわけラストの中篇「雲雀」のクライマックスへの盛り上がりは凄まじい。名手佐藤亜紀の、見事なストーリー・テリングの真骨頂を味わえる。場面と場面、台詞と台詞がこれでもかというくらいに軽快に繋がっていき、ゆっくりと動き出した物語が最後には怒涛の如き奔流となって突き抜けていく。物語のスピードに引っ張られるようにぐいぐいとページを追って、遂に最後のページを捲りながら、物語のテンションが最高潮を迎えたその瞬間に、呆気にとられてしまうほどに唐突でストレートなハッピーエンドを見せられて、読み終えてしばし呆然としながら、ジェルジュが終に手に入れたささやかな幸せを我が事のように一緒に噛締めている自分に気がついた。

初めて読み終えた時は、自分がただひたすらに感動してしまい動けないのだと気づかないくらいに、深く強く打ちのめされて呆然としていた。それから何年かが過ぎ、『雲雀』を3度4度と読み返してきたが、この感動が色あせることは決してなく、読み返すたびに輝きを増しているようにさえ思われた。
生涯で一冊を選べと言われた結局『天使』と『雲雀』を選ぶのではないだろうか。こんな小説はほかにない。
そしてそう断言できる人は、きっと私のほかにも沢山いるのだと思う。
一人でも多くの読者と出会って欲しい一冊である。

くどいようだけど、本当に、ただただもうこれは空前絶後の傑作なのです。
まさにロマンチック ★★★★★
『天使』の主人公、ジェルジュが登場する続編(正確に言うと天使の後日譚ではない)。

むしろ前作よりも、面白いかも。特にジェルジュの父親と母親の話、それと最終話はちょっとロマンチック。こういう終わり方もいいかもしれない。
天使を読んだら必ず読んだほうがいい ★★★★★
前作天使の外伝。ジェルジュの部下やジェルジュの父、ジェルジュと関わりのある人物達を補完し、最後にジェルジュ自身を補完する。天使を読んだら必ず読んでおきたい小説。
中編集なため話事態は天使よりも理解しやすい。ジェルジュが主人公で無い編もあるため、違う人物からジェルジュがどう見えるのかもわかる。最後の編はスパイ小説のようにスリリングな展開もあり、ジェルジュのその後も書かれているため読んだら天使シリーズは終わったのだと満足できる。
雲雀を読むと天使ももう一度読みたくなる。雲雀で登場するオットーとカールの兄弟がジェルジュの部下であるという事実が天使をさらに面白くする。天使ではオットーとカールの存在はまったく描写されなかった。しかし、我々の知らないところでオットーとカールは動いているのだ。ジェルジュの指示でオットーとカールが密かに動いているとすれば、天使を読むときにその辺を考えて読むとよりいっそう面白くなると思う。
雲雀は天使を補完し天使を完結させる小説なので、天使を読んだら必ず読んだほうが絶対に面白い。そしてさらに雲雀を読み終わったあと天使を読むとまた違った面白さが堪能できるはずだ。
シビアな文体の心地よさ ★★★★★
第一次世界大戦の最中、特殊な「感覚」を持つジェルジュの
半生を描いた長編『天使』の姉妹編で、こちらは短編集になっています。

自分は『天使』⇒『雲雀』の順で読みましたが、相変わらず可能な限り
説明文を省いていて、読者に対してシビアな文体です。
それも良く練られたプロットだからこそ可能なことでしょうね、
無駄を省かれた物語の洗練度は並外れています。一文の密度がとても濃く、
斜め読みはとても無理なので、噛みしめるように読み進めたのですが、
それがすごく心地よいのです(笑)
文章を噛みしめて物語の世界に沈み、ラストに辿り着くと、
「ああ、久々に読書をしたなあ。。。」という幸せな気分になりました。

ジェルジュの異能など、設定部分はライトノベルのそれに近いのですが、
文体やプロットは間違ってもラノベではなく、純文学です。
ジャンル分けが難しく、そもそもその意味もないかもしれませんが、
読後感だけで言うなら、アーシュラ・K・ル=グヴィンの『闇の左手』
『所有せざる人々』などのSF作品を読んだ時の感覚に近いです。
どれも読んだ後は、すごく満足できました。

こういう、ジャンル小説×純文学みたいな作品をもっと評価する土壌が
日本にあればいいのになあと思います。