どうでもいい本
★★★☆☆
まず、著者の視野の範囲を疑いたくなる。皇族、朝青龍、安部晋三…テレビや週刊誌ばかり読んでいるのではないかと勘繰ってしまう。そういう媒体からの結論も程度が知れている。 むろん著者も真剣に患者と向き合っている。しかし「こんな患者がいるか?」という気になってしまう。仮に「うつと言いたがる」患者がいたとしても、世の中そういう患者だけなわけがないと思う(というか、そうに決まっている)。 さらに著者は「うつではもう物足りない」と言い出す。いや、そういう不真面目な人はいるだろうが、そんな人ばかりで世の中できているわけがないということくらいわからないのだろうか。 とにかく、著者は真摯で我々を啓蒙したがっている。しかしどうにもピントはずれである。☆三個なのは少なくとも著者には困っている人達に対して誠実な態度がみられるから。
どげんしたもんですかね
★★★★☆
たまたまタイトルが気になったので購入。
私は精神疾患で現在リハビリ期間であり、この本は批判的な視点で読んだ。
読んだ感想は、内容はそれほど悪くない、という印象だ。
現状において、安易ともいえる「うつ病」診断に警鐘を鳴らすものとなっている。
実際病気で苦しんでいる人がいる一方、ゴネ得ともいえるような人を糾弾したい気持ちは理解出来る。
著者の正義感からすれば、こういう本を出すのは当然なのかも知れない。
しかしながら、タイトルや論点が今一つ。
「うつ病セレブ」や「ゴネ得」といった存在を無くしたいという目的が感じられるが、おそらく逆効果だ。
このタイトルでは、実際にうつで苦しんでいる人にとってみれば、心を突き刺すものでしかない。
一方、仕事をさぼりたいなどと普段考えている人にとっては、さぼる方法論の提示になり得るものだ。
これは、とても難しい社会問題を孕んでいると思う。
通常世の中は、腕の良い人間は報酬が多いというのが常識だと思うが、医療現場は必ずしもそうでは無いという矛盾がある。
現在の医療制度では、実施作業に比例して点数を付け、それが診療報酬となっており、治癒の結果は評価されない。
つまり、腕が良く良心的な医師ほど、報酬が少なくなるという、なんとも切ない現実がある。
こういう部分を、世の中全体で考えなければ、なかなか本書のような問題は解決しにくいと思う。
このような示唆を与えてくれた本としては、高く評価したい。
最近自称うつ病の人多いですね。
★★★★★
この本の中に出てくるような人たち、私の周りにも増えてきました。
私がいつも思っている事を、香山さんはズバリ的確にうまく書かれていると思います。
現状その通りなんです。
うつ病を理由に会社を長期間休み、会社からは給料をもらいながら、療養、リハビリと称して旅行やレジャーを元気いっぱい生き生きとしてやっている人たち。
いや、別にいいんです。その人が会社に行こうが休もうが私には直接関係がない。
そういう人たちは、「うつ病といえば何でも許される」と思っています。
私と交わした約束を平気で破り、当然こちらは文句のひと言も言います。
すると、
「うつ病だから仕方がないじゃないか。あなたはうつ病の苦しさが分からないからそんなことを言うんだ。あなたは人間じゃない」
などと逆切れ。
私はそれで過去何度も大きな被害を受けてきました。
うつ病だろうが何だろうがそんなことは関係ありません。
約束は守れ。出来ない約束ならするな。
それだけです。
自称うつ病の人がこの本に対して非常な嫌悪感を抱くであろうことは想像に難くありません。
自称うつ病の人から実害を受けている人にはぜひ読んでいただきたい本です。
興味深い情報だったが,何が言いたいのかいまひとつ不明
★★★☆☆
「うつが流行?」してきたころ,わたしの勤める会社でも,うつと診断されるものが出てきた。そして,精神科の診断は,いったいどのように行うものなのだろうかと疑問に思った。医師の主観や,これまでに診断した患者の状態,教育を受けた環境などによって,診断が異なるのではないかと。
現在のうつの診断は,ベテランがしても新米がしても変わらないように,その診断基準が明確になっているらしい。それに基づいて診断するのが一般的なのだろう。しかし,その機械的な診断の限界が見え隠れしているようだ。また,病気の原因を考慮しないために起こる問題もある。
たとえば,非常に責任感が強く,几帳面な人が仕事に追われた果てにうつ病になる。それでも責任を果たそうと働き続けてさらに悪化して休職。一方,仕事はほどほどで,趣味に生きていた人が,失恋で大きく落ち込み,うつ病と診断されて休職。病気と診断されれば同じことだと,理屈はわかっても,なかなか納得できるものではない。
うつ病がアイデンティティになったり,病気療養中に気分転換と海外旅行に出かけたりするものがいる一方で,うつ病と知られると会社をやめなくてはならないからと,病状を隠して働き続けるものもいるという。うつ病も二極化しているようだ。
うつ病をもう少し分類して,それぞれに適した治療をする必要もあろう。仕事のストレスによるうつ病が増えている,という話は一般にはうなずいてしまいそうだが,それに対する疑問も書かれている。このようなことはもっと研究をして,精神科の診断をより確かなものにして欲しいものだ。
なお,著者はこの本で何を主張したかったのだろうか。本の展開もしっかり組み立てられているようには思えなかった。興味深い話だが,だらだらと聞かされているという印象。本書の内容を,資料や実例を踏まえながら,主張とともにまとめ上げたものをぜひ読みたいと思った。
うつ病の人に向かって直接話せる内容ではない
★★☆☆☆
精神科医の香山リカ氏による著書。「私はうつ」と言いたがる人たちというタイトル。これは何を意味するのだろうか。体に不調を訴えて、「私はうつ」と心療内科・精神科に来るけども、実は「うつ」ではない人が多いということを言いたいのであろうか。
このタイトルは本当にうつ病を患っている人に対しては、少し厳しいタイトルのように思う。せっかく「うつ」に対する認識が世間で少しずつでも広がっているところで、「自称うつ病」などという名前をつけて、区別するのはどうかと思う。現在うつ病の人はどう感じるだろうか。うつ病の人は自責の念を異常に持つのが特徴であることから、もしかして自分は「うつ病」として診断されているが「自称」なのかも・・・って思うのではないだろうか。また、周りからも「擬態うつ病」ではないか?と思われてやしないか?なんて思うことにもつながると思う。
確かに、少なからず「うつ病」の診断書を悪用しようとする輩もいるかもしれない。著書の中でも、うつを悪用?みたいな例が掲載されているが、多くがそうではないと思う。しかも「うつ病セレブ」だとか「うつ病難民」だとか、メディア受けするように名前をつけるのもいかがなものかと思う。
自分の体に不調を感じ、わらをもすがる思いで心療内科・精神科に行く人が大半ではないだろうか。現実に体調不良であれば、たとえ、「私はうつ」と言いたがってもいいと思う。「私はうつ」ということで先生に何かを訴えかけているのだから。それを読み取るのが診療内科医・精神科医の役目ではないだろうか