心のこもった、まっすぐでひたむきな演奏である。しかもそれだけではない。どんなに音楽が疾走していても、あるいは酔わせる歌い回しが待ち構えていても、それに淫(いん)することなく、川畠の音楽にはそこに潜む音楽の意味を実直に追い求めているようだ。うまいだけの演奏にありがちな冷たさがなく、落ち着いて温もりのある川畠ならではの音色のおかげだろう、どの曲も聴後にはほのぼのとした暖かさが胸に残る。これは若手の他のヴァイオリニストにはめったに見られない川畠ならではの個性。ここで改めて、8歳で視覚障害の後遺症をもつようになったとか、英国王立音楽院での輝かしい成果などを持ち出す必要はないと思う。
抑制されたポルタメントとリズムの揺れに上品なロマンを漂わせるクライスラーから、弾けるようなリズムのなかにも憂いがのぞくガーシュウィン、超絶技巧の切れ味も見事なサラサーテの「バスク奇想曲」まで、どの演奏も内容が深い。
また、安定感豊かなたっぷりとした美音を奏でるピアノのダニエル・ベン・ピエナールが、少ない音のなかでキラリと光るものを出す非凡な手腕にも耳を惹かれた。(林田直樹)
川畠氏のCDの中で一番のお気に入りである。
★★★★★
川畠氏は、私が今レビューを書いている時点で6枚のCDをリリースしている。その中で私の一番のお気に入りがこのCDである。選曲はどのCDもそれぞれ個性があって甲乙付けがたいのだが、なんといっても「ヴァイオリンがうたっている・・・」そう感じる1枚なのだ。収録曲の中には歌劇から取り入れたものもあり、ジャズが好きな方からすれば物足りない、ちょっと酔いきれない、堅い演奏かもしれない。だが、私は川畠らしい綺麗な音色とリズム感のこのジャズもそれなりの色気を感じて気に入っている。また、前奏曲とアレグロ(クライスラー)はスピード感も熱意も絶品だと思う。メロディ(チャイコフスキー)も雄大で美しいの一言だし、スラヴ舞曲は酔いしれてしまうし、チャルダッシュは彼の為の曲ではないか・・・・と感じるほどCDで聴いても生演奏で聴いてもいつも感動してしまう。バッハのアリアも彼の2枚目のCD「アヴェマリア」を聴いた事のある人ならば分るように、期待を裏切らず美しい。とにかく、私にとってこのCDは堅苦しい言葉を並べて薦めるより、「まぁ、聴いてみてくれたまえ!」と友人に赤ワインを飲みながら薦めたくなるのである。
素晴らしい、ガーシュウィン
★★★★★
ハイフェッツの名アレンジによるガーシュウィン、そしてそれを見事に再現している演奏は本当に素晴らしいです。決してやさしくはないこの曲を、細部にわたって丁寧にここまでよく弾けるものだと感動しました。相当なテクニックの持ち主でいらっしゃるのでしょう。それに、原曲であるオペラのクラシックでお洒落な雰囲気が出ていて最高でした!もちろん、他の曲も聴きごたえ充分で本当に楽しめました。
一度聴いたら虜
★★★★★
聴くだけで涙が出るような、頭の芯を刺激する音を奏でてくれます。非常に感情のこもった演奏ですが、少しも不快ではなく、寧ろどんどん引き込まれていきました。「愛の悲しみ」や「メロディ」などは、特に味のある演奏で、川畠氏の個性が活かされていると思います。
愛の悲しみ
★★★☆☆
アヴェマリアのCDで川畠成道を知り、今回のCDはとくにジャズに期待していたけれど、ジャズの良さがあまり出ていなかったと思う。ヴァイオリンという楽器でジャズを演奏するのには限界があるかもしれないですね。他の曲はすばらしい演奏で感動しました。